ホーム | ブラジル国内ニュース | 《ブラジル》コロナワクチン義務化巡って最高裁で審理へ=大統領対ドリア知事の対決の側面も=目立つ大統領側言動の矛盾

《ブラジル》コロナワクチン義務化巡って最高裁で審理へ=大統領対ドリア知事の対決の側面も=目立つ大統領側言動の矛盾

フクス長官(Marcelo Camargo/Agencia Brasil)

 最高裁が新型コロナウイルスのワクチン接種を国民に義務化させるか否かの審理を行う意向で、現状では大半の判事が義務化を支持しているという。27日付現地紙が報じている。
 新型コロナウイルスに対する予防接種を義務化するか否かの議論は、今月16日にジョアン・ドリア・サンパウロ州知事がサンパウロ州では予防接種を義務化すると発表したのに対し、ボルソナロ大統領が19日に「義務化はしない」と反論したことが発端だ。大統領は8月に、予防接種反対派の支持者に対し、新型コロナウイルスに対するワクチンができても、誰も接種を強要できないと答えていた。
 この問題は、ドリア知事がサンパウロ市ブタンタン研究所に協力させ、国内治験を行った中国シノバック社が開発したワクチン「コロナバック」を購入する意向を、エドゥアルド・パズエロ保健相が20日に表明したのに対して、ボルソナロ大統領が21日に「購入を認めない」と反対したことで激化。
 マスコミや国民、政界からは「接種を義務化させるべきだ」との反論が相次いでおり、ルイス・フクス最高裁長官も23日に、最高裁内で審理する必要があるとの考えを表明している。
 最高裁の動きに対し、大統領は26日「ワクチンの問題は医療の問題であり、司法が関与すべきものではない」との発言を行って反対しているが、大統領自身が医療の専門家ではない。
 保健相がコロナバック購入の意向を発表してしまったこと、さらに大統領が購入停止の理由としてあげた「許可が出ないことには」という件に関しても、ブラジル国家衛生監督庁(ANVISA)が600万人分のコロナバックの中国からの輸入を許可したことで、審理の必然性が高まった。政界でもすでに、民主労働党(PDT)をはじめ八つの政党が最高裁に対し、国民のワクチン接種の義務化を問う請求を提出していた。

 フォーリャ紙の調べによると、11人の最高裁判事中、少なくとも7人が「接種の義務化」を支持しているという。反対しているのは「まだ十分なワクチンの確証がとれていない」とする2判事だけだという。ただ、フクス長官はまだ、同件に関する審理をいつ行うのが良いかを決めかねているという。
 そこで現在浮上しているのが、「両親が未成年者にワクチン接種を行わせるよう、国が強要できるか」という問題に関する審理だ。同件はコロナワクチンを巡る問題ではなく、国が定めたカレンダーで規定された予防接種を、宗教上の理由などで受けさせない権利に関する審理で、9月には同件の判決内容は判例とすることが確認された。同件の報告官はルイス・ロベルト・バローゾ判事だ。同判事は科学的根拠を大事にする判事で、連邦政府のコロナ対策に関しても、しばしば、厳しい意見を口にしてきた。
 また、ボルソナロ氏自身にも矛盾がある。大統領は2月に、「流行病に対する予防接種を含む決断は当局が行うことができる」「ワクチンの義務化は州や市が決定できる」とする法令13979/20を裁可している。
 他方、大統領がワクチンの本命としたがっていると伝えられている、英国オックスフォード大学がアストラゼネカ社と共同で開発中のワクチンに関して、開発チームが26日に、「高齢者にも強い抗体ができた」との実験結果を得たとの発表を行っている。