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《ブラジル》教育投資で生活の質が向上=GDPの1%で26%も?

親族初の大卒者のマウロ・コンセイサン氏と彼の支援で大学を卒業した長男のマテウス氏(6日付エスタード紙の記事の一部)

 ジェツリオ・ヴァルガス財団(FGV)が6日、教育への年間投資を国内総生産(GDP)の1%増すだけで、今後50年間の生活水準は最大で26%向上するという研究結果を発表した。
 FGVのブラジル経済研究所(Ibre)研究員のサムエル・ペッソア氏は、「教育は長期にわたる投資で、社会的、経済的な効果は社会資産となる」とし、スウェーデンや韓国の例を挙げた。
 1933~1985年の教育投資とその効果を分析したエコノミスト達は、当時は初等教育を通して人的資本に投資するという考えはなく、民主主義と権威主義を繰り返す間も教育投資はなおざりにされていたという。
 2019年のブラジルのGDPは7兆3千億レアルだが、世界銀行は今年は5・4%減と見ている。ペッソア氏は、ブラジルが基礎教育への投資を増やせば、30年後の生活水準はポルトガル人と同等になるという。
 同氏が例として挙げるのはセアラー州だ。同州では初等教育を全州民に行き渡らせる事を教育政策としている。その効果は、昨年行われた基礎教育評価システム(Saeb)の学力テストで、同州の小学2年生のポルトガル語と算数の点数が全国平均を大きく上回った事で実証された。

 ペッソア氏は、同州の人達は今後数年間で、初等教育への投資が急激に実を結ぶのを見るだろうとし、同州の政策が全国に浸透すれば他州でも同様の結果を見る事が出来るはずだと強調した。
 エコノミスト達は、GDPの1%を教育に投じれば、労働者の生活水準(生産性)は26%、GDPの2%ならば32%向上するという。企業にとり、労働者の知識や技能の平均レベルが低い事と新型コロナの感染拡大で生じた経済危機による失業者の増加は、大きな懸念材料だ。
 昨年の生活水準を国民一人当たりのGDPで見ると3万4500レアルで、1995年~2018年の生産性の伸びは僅か1%だったという。
 全国財・サービス・観光商業連合(CNC)によると、現在失業中の人や新たに労働市場に参入する人を吸収するには、今後10年間の経済は年間約3・5%ずつ成長する必要があるという。
 失業者や新規参入者の吸収には経済活動の再開と生産性向上が不可欠で、現在の生産性や成長見通しのままでは、パンデミックで生じた14・4%という失業率を低下させるのは無理だという。
 就学年数が増すと所得や労働条件が改善する。地理統計院によると、小中学校中退者と大卒者の平均所得には4千レアル近い差がある上、パンデミックによる所得低下は低学歴者ほど大きい。新型コロナの影響に関する調査によれば、低学歴者の所得は5~7月に25~18%減っている。
 働きながら大学を出た事で労働条件が改善した人や、父親が大学を出た事で所得が増え、自分も高等教育を受けられたという人は、少しでも多くの人が公立校出身者や黒人への特別枠などを使って進学し、労働条件や生活水準の向上を体験出来るよう望んでいる。(6日付エスタード紙より)