ペルーのヴィスカラ大統領が9日、同国議会での罷免投票によって罷免された。この後は同国の下院議長が行政を代行する。10日付現地紙が報じている。
9日に行われた罷免投票では、87人の同意があればいいところを105人の議員が罷免に賛成し、罷免が決まった。今回の罷免は、ヴィスカラ氏がモケグア州知事だった2014年の収賄疑惑により、「倫理的不適格」と訴えられていた。同氏は当時、公共工事の入札で便宜を図った見返りに、230万ソル(約6700万円)の賄賂を受け取ったとされている。この疑惑に関して、同氏は現在も関与を否定している。
今回の罷免の背景には、ヴィスカラ氏と議会とのかねてからの対立関係があった。ヴィスカラ大統領は2019年9月30日、同国議会が憲法裁判所の判事7人中6人を野党側の判事にしようとしたことを理由に議会の解散を宣言。見返りに議会が大統領の職務停止で返すなど、緊張した状態を生んでいた。
同国議会は今年も、9月に別件でヴィスカラ大統領の罷免審議を行ったが、そのときは32人の賛成に終わり、罷免を免れていた。
大統領は国民からの支持率が高く、直近の世論調査でも75%の支持を獲得。逆に、議会に対する国民の支持率は低く、不支持が59%に達していた。
ヴィスカラ氏は罷免決定後に記者会見を開き、「法的手段に訴えて抵抗しろという声はいくつもあったが、決定に従う」として、罷免を受け入れた。
来年7月までの暫定大統領は下院議長のマリアノ・メリーノ氏が務めるが、議会が国民に不人気なだけに懸念の声もある。
ヴィスカラ氏は、前任のクジンスキー氏が罷免審理にかけられたことで2018年3月に辞任したことを受け、副大統領から大統領に昇格していた。
ペルーでは政界の激動が止まっていない。クジンスキー氏の前任のウマラ元大統領は2017年の収賄容疑で逮捕されたし、ウマラ氏のさらに前任のガルシア元大統領は2019年に、逮捕直前に自殺している。