当選確実が発表されるのに5日間かかった今年の米国大統領選に関し、「歴史上稀に見る大接戦だった」「米国を2つに分断する選挙」であったかのように言う人もいる。
それは、敗れたトランプ氏がバイデン氏の投票を訴えて食い下がっていることで、そういう印象が生まれやすくなっているところがある。とりわけ、日本のネトウヨたちが同じくバイデン氏の不正を叫びネット上で驚くほど盛り上がっている事実もある。
だが、コラム子に言わせてもらうなら、今回の選挙結果がそこまで接戦だったとは思っていない。当選の発表が行われた7日の時点でバイデン氏の選挙人獲得数は279人。
この時点で過半数の270人を9人上回っている上に、この時点で選挙人獲得の行われていなかったジョージア州、アリゾナ州でも実質リードを12日現在でもしている。この2州を取ればバイデン氏の選挙人獲得は306人となり、「圧勝」とまではいかないものの、比較的余裕を持った勝ち方の部類となる。
さらにいえば、この2州を仮にバイデン氏が落としても、バイデン氏がすでに勝利した州の結果を一つ覆して逆転せねばならない。12日現在で、選挙管理委員会から不正の報告はあがっていない。
加えて、トランプ支持者の反論も盛り上がっていない。ロイターが行った世論調査によると、国民の79%がバイデン氏の勝利を信じ、「まだ選挙は終わっていない」と思う人が13%、「トランプ氏が勝った」と思っている人はわずか3%にすぎない。
メディアもトランプ氏の抵抗を「不正を訴えるものの根拠がない」「往生際が悪い」と批判的な報道を行っている。これで「世論は2分」と主張するにはいささか無理があると思う。
世を2分した選挙ということでいうと、2014年の伯国大統領選の方がはるかに切羽詰まっていた。
当時、現職のジウマ大統領はアエシオ・ネーヴェス氏を振り切って2選を決めたが、このときの差はジウマ氏が51・6%の得票率でアエシオ氏が48・4%。差は伯国選挙史に残る僅差だが、「あれ? こんなに差があったっけ?」と言いたくなるくらい、結果が出た後の世の緊迫感が強かった。
アエシオ氏は敗戦を最後まで認めず、ネット上も荒れに荒れ、その世論をマスコミが強く味方した。当時は前年にサッカーのコンフェデ杯時の一カ月続いたマニフェスタソンがあり、この選挙の少し前からラヴァ・ジャット作戦がはじまり政権が揺れていたためだ。
このときに「PT(労働者党)政権憎し」の国民感情がほとばしり、それが2年後のジウマ大統領罷免にまでつながった。その「PT憎し」の感情は18年の大統領選でのボルソナロ極右政権の誕生にまでつながった。
だが、国民の選択があまりに極端で、環境問題やコロナ問題で国際的感覚と明らかに真逆を行くなどの極端さが露呈され反対派の不満も爆発。二分化が長引き激化している。
あの選挙のときに感じた「激動のはじまり」みたいなものが、今回の米国大統領選からは正直感じられず、むしろその逆に「何かの終わり」ばかりを感じてしまう。それはコラム子の気のせいだろうか。(陽)