国立宇宙研究所(Inpe)の発表によると、法定アマゾンは2019年8月~2020年7月の1年間に前年同期比で9・5%増となる1万1088平方キロの森林を失ったと11月30日、12月1日付現地紙、サイトが報じた。ただし、この伐採増加率は予想よりは低かった。
今回発表されたのはProdesと呼ばれるシステムを使った政府の公式データで、国立アマゾン審議会議長でもあるモウロン副大統領とマルコス・ポンテス科学技術相がInpeを訪問した際に発表された。
19年8月からの1年間の伐採面積は2018年8月~19年7月の1万129平方キロに続く1万平方キロ超えだ。
法定アマゾンでの森林伐採は2012年の4571平方キロが最少で、2014年と17年に減少した以外は増加傾向にある。12年の数字は2004年の27772平方キロを83・5%下回るが、現在の数字は12年を142・6%、抑制目標上限を184%上回っている。
ブラジルは2015年のパリ協定締結時に、法定アマゾンでの不法伐採を2030年までにゼロとする事を約束しており、協定違反にも問われ得る。現政権は昨年来「法と治安保障作戦(GLO)」に基づいて兵士を派遣し、森林火災や森林伐採の抑制を図っている。火災抑制にはある程度効果が出ているが、伐採抑制の方は思うほどの効果が出ていない。
とはいえ、伐採面積は前年同期比で30%増の1万3千平方キロになる可能性があると見ていた関係者は、1万平方キロ余りという結果が予想より少ないので驚いたという。
InpeにはIBAMA(国立再生可能天然資源・環境院)が不法伐採の取り締まりなどに使うDeterと呼ばれるシステムもあり、そちらの方は前年同期比で34%の伐採増加をとらえていたからだ。Prodesとの間では、解析度や観測時の天候などにより、把握した伐採面積に差が生じ得る。
ボルソナロ大統領が当選直後に法定アマゾンの開発と食糧増産、先住民保護区での鉱物採掘などを認める発言をした事もあり、法定アマゾンでの森林伐採や森林火災の増加は国際社会の注目を集めている。昨年はDeterのデータを改ざんし、政府やブラジルの印象悪化を招いたとして、科学者のリカルド・ガルヴァンInpe所長を解任した事でも国内外からの批判を浴びた。
副大統領もInpeのデータを批判した事があるが、11月30日の会見では「これらの数字は現実のもので、我々は現状から逃げ出す事は出来ない」「アマゾン審議会発足時から対策を講じるのが遅すぎたと言い続けてきたが、伐採対策の遅れは私の責任」と語った。今年の軍派遣は5月で活動開始が遅れたが、伐採増加率は一応、予想以下に保たれた。
連邦政府は最近も法定アマゾン内を走る高速道建設を検討しており、開始されれば国内外からの批判の高まりは避けられそうもない。