ジョアン・ドリア・サンパウロ州知事(民主社会党・PSDB)とサンパウロ市にあるブタンタン研究所のジマス・コーヴァス所長が3日、同研究所が治験を統括し、生産も行う中国シノバック社製の新型コロナウイルスワクチン「コロナバック」の接種は、来年1月から可能と主張。来年3月からとする保健省のプランを否定し、批判した。4日付現地紙が報じている。
保健省は1日に、オズワルド・クルス財団やブタンタン研究所の代表なども参加した連邦議会の委員会で、ワクチン接種計画について語り、接種開始は来年3月の予定と発表した。現時点で購入が確定しているのは、オックスフォード大学とアストラゼネカ社が共同開発中のワクチンのみだ。
3日、これに反論する形で、ドリア知事らが声明を発表。「来年1月から接種は可能」と主張した。ドリア知事は「私たちは法をきちんと遵守する形で手続きを進めている。国家衛生監督庁(ANVISA)の決まりを守り、人々の命の保護に努めている」と強調した。
コロナバックは現在、治験の最終段階にあり、ドリア知事は「12月にはANVISAに登録申請を出せる。1月にはサンパウロ州内での接種が可能となるはず」と語っている。
同知事によると、サンパウロ州は7日にも接種計画を発表する予定。連邦政府からの投資援助の有無に関係なく、計画を実行する意向だ。
保健省は10月20日、23州の知事たちが参加するビデオ会議で、コロナバックの購入と生産工場増築への投資援助を了承する旨を公言した。だがその翌日、かねてからの中国嫌悪とドリア氏へのライバル意識から、ボルソナロ大統領が強硬に反対し、購入と投資が中止となった。
一方、コーヴァス所長も「私たちが治験に協力し、技術移転も受ける約束のワクチンは、ANVISAへの登録が間近」とし、接種の実施時期は近いと訴えた。
ANVISAは2日に、国内で治験中のワクチンの「緊急使用」を認めるとの見解を示した。同所長はこの件に関しても「緊急使用許可ではワクチンは全面的な形で登録されない。私たちのワクチンは、間もなく完全な形で登録できるから、緊急使用許可申請は必要ない」と品質に自信を見せた。
サンパウロ州がこうした動きを見せる背景には、各国のコロナ対策が進み始めていることがある。英国は来週からファイザー社のワクチン接種を始める。また、ロシアは英国に関する報道直後、来週から同国開発のワクチン「スプートニクV」の大規模接種を始めると発表。3日にはモスクワ市が医師や教員などを対象とした大規模接種は5日からと発表している。
米国でもファイザー、モデルナ両社が年内にもワクチン接種が可能になるように動き、欧州でも申請が行われはじめている。ファイザー社は既に、中南米諸国に5400万回分を売る契約を結び、ブラジルにも早々に決断するよう迫っている。
コロナバックを連邦政府がどうするかに関しては16日に最高裁で全体審理も行われる予定。