ホーム | ブラジル国内ニュース | 《ブラジル》コロナ患者からスーパー耐性菌発見=パンデミックの陰で流行の恐れ=半数が90日以内に死亡、致死率39%

《ブラジル》コロナ患者からスーパー耐性菌発見=パンデミックの陰で流行の恐れ=半数が90日以内に死亡、致死率39%

超耐性菌発見について報じる9日付BBCブラジルの記事の一部

 新型コロナの感染再拡大やワクチン問題に注目が集まる中、国家衛生監督庁(ANVISA)が7日、ブラジルでもスーパー耐性菌が発見されたと警告を発したと8日付BBCブラジルなど多くの現地サイトが報じた。
 あらゆる薬剤に耐性を持つ可能性があるスーパー(超多剤)耐性菌のカンジダ・アウリスの存在確認は、「Superfungo」などの見出しで報じられた。
 ブラジル初のカンジダ・アウリス感染症患者は、新型コロナ感染の疑いでバイア州の病院に入院していた男性だ。スーパー耐性菌への感染は、サンパウロ総合大学付属クリニカス病院に送られた検体を分析して確認された。
 この男性は新型コロナとカンジダ・アウリスの両方に感染した可能性があるが、新型コロナはウイルスでカンジダ・アウリスは菌だ。ポルト・アレグレ連邦健康科学大学教授で感染症専門医のアレッサンドロ・コマル・パスクアロット氏によると、「世界的に見ても症例は僅かで、流行が起きても小規模だから、新型コロナほどの脅威にはならない」という。だが、両者が共存する環境では致死率が高まり、医療崩壊が進む可能性がある。
 カンジダは病院内での血流感染症の原因としてよく知られ、薬剤耐性の問題が出る事は少ない。だが、カンジダ・アウリスは、米国疾病対策予防センター(CDC)が2019年に、感染症患者の90%以上で少なくとも一つの薬剤への耐性が見られ、二つ以上の薬剤への耐性が見られるものも30%と報告しているように、薬剤耐性が非常に強く、通常の抗菌薬が効かない事がある。

 CDCによると、カンジダ・アウリスに感染した患者は半数近くが90日以内に死亡している。カンジダ・アウリスによる症例は2009年から報告されており、昨年4月には、「人殺しの耐性カンジダ菌」が世界同時発生する可能性を伝える報道が流れていた。
 中国の研究者が11月に発表した研究結果によると、現在までに報告された患者は33カ国で4700人に上る。カンジダ・アウリスが怖れられる最大の理由は薬剤耐性の高さで、3種類の抗菌薬全てが効かない可能性もある。致死率が39%と高いのもそのためだ。
 人類は治療効果を高めるために抗生物質などを開発し、より長命になってきた。だが、菌やバクテリア側もそれから生き残るために、薬剤耐性を備えた新種を生み出してきた。このことは公共衛生上、最大の脅威となりうる。
 今回の症例は、コロナ感染症患者用の集中治療室で使われたカテーテルの1本に菌が付着していた事で発見されたが、体力や免疫力が低下した患者が感染し、血液中に入り込めば、死に至る可能性は45%に達する。ANVISAによれば、この菌は病院内で使う消毒薬などにも耐性を持っており、ハイリスクの人は致死率も高いという。
 カンジダ・アウリスへの感染は通常の検査では確認が困難で、気づかれていなかった症例もありうる。専門家の中には超耐性菌出現と地球温暖化を結び付ける人もいるというが、今後の対策が待たれる事例の一つだ。