ボルソナロ大統領が15日に「私は予防接種を受けない」と断言した。700万人が新型コロナに感染し、18万人以上が死亡しているのにだ。
たとえ大統領でも、単なる「一個人、一般人として」と限定して言う分には、何を考えても何を言っても自由だ。だが、大統領という肩書がついた「公人として」なら話は別だ。どこで何を語り、どう行動するかは慎重に考える必要がある。ボルソナロ氏には、そんな公私の区別がキチンと付いていない印象が強い。
大統領は同日、長男のラシャジーニャ疑惑でも、「国税庁が個人情報を漏らした」「公正な扱いを受けていない」と語ったが、州議だった故に捜査を受け、資産情報などが表出した息子のために国の諜報機関を使い、メディアに報道を禁ずる理由は何もない。
18年大統領選前後からの彼の言動が、支持者による数多くの問題行動を引き起こした事を考えると、今回も予防接種を拒否する人や予防接種希望者を攻撃する人が出たりして、予防接種の効果が損なわされそうな気がする。
18年には彼の支持者達による左派政治家や運動家の襲撃や検閲同様の行動が頻発し、最高裁も懸念を表明した。今回の地方選後に起きた、黒人で女性の市長や市議当選者、最多得票だった性転換者の女性市議当選者、障害を持つ男性市議当選者らへの脅迫問題で、同じメールアドレスが使われた件も気にかかる。
意見や立場が異なる人がいるのは当然だが、相手を攻撃・排除したり、違いを否定するメッセージが大統領周辺やその支持者から大量発信され、身内だけを守ろうとする言動があるのは当たり前ではない。大統領が何か言ったことに対し、彼を喜ばせようとする支持者が行動を起こす可能性を過小評価してはならない。
米国では医療関係者が予防接種解禁を喜び、大統領経験者らが「予防接種を受ける」と語っている。公衆衛生の弁護士でもある伯人医師は、今回の発言後、「大統領の態度は国民の保健衛生上の権利を侵害するもの」と指摘している。 (み)
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