サンパウロ市のブルーノ・コーヴァス市長とサンパウロ州のジョアン・ドリア知事が1月1日から、サンパウロ市内と同市と周辺の諸市を結ぶ公共交通機関では60~65歳の人からも料金を徴収する事を決めたと23日付現地サイトが報じた。
60歳以上の高齢者が公共交通機関を利用する時の料金は、市や州が公共交通機関に補填しており、以前から市や州の財政を圧迫する原因の一つとされていた。今回の決定はこの負担を軽減するためのものとされ、60歳以上、65歳未満の人達からも利用料金を徴収する事にした。
サンパウロ市のコーヴァス市長は22日に同件を市議会にかけ、23日に裁可。ドリア知事は23日付官報に、高齢者への恩恵について定めた州条例の規定を変更する知事令を掲載した。
サンパウロ市内ならびに同市とサンパウロ大都市圏の諸市を結ぶ公共交通機関を無料で利用できる年齢を60歳に引き下げたのは、交通料金値上げで大規模な抗議行動が起きた2013年で、当時の市長と知事はフェルナンド・ハダジ氏とジェラウド・アウキミン氏だった。
具体的には、サンパウロ市内を走るバス、地下鉄、都電(CPTM)と、同市とサンパウロ大都市圏の諸市を結ぶバスで65歳未満の人への料金徴収が始まる。
ただし65歳以上の人は、従来通りに無料で利用できる。
サンパウロ市市議会は今回の変更を、別のテーマを扱う市条例の変更の形で承認した。変更を行った条例(項目)は区役所の財政管理に関するものだが、他の条例の変更も伴うものだったため、高齢者への恩恵制限を招いた。
今回の変更により、公共交通機関を無料で利用できる高齢者の数が減るため、市役所は公共交通機関向けの補助金の予算も引き下げた。23日に承認された来年度予算は679億レアルで、市交通局の予算は34億レアルから32億レアルへと7・4%減額された。
ただし、ブラジル消費者保護協会(Idec)のラファエル・カラブリア氏は、「新しい契約では、バス会社への支払いは乗客毎にではなく、運行経費に対するものとして行われるから、無料利用できる人か否かは無関係」「利用者の権利はく奪」とし、今回の決定の正当性に疑問を呈した。
これに対しサンパウロ市とサンパウロ州は、「長寿化に伴う変更は社会保障の分野でも起きており、65歳以上を対象とする国の高齢者憲章に倣った」との共同声明を出している。
なお、サンパウロ市市議会は23日、正副市長や局長の給与調整も承認した。来年の公務員給与の調整は国が禁じているが、2022年1月から46%調整という条例はコーヴァス氏自身が裁可し、24日付官報に掲載した。これにより、22年からの市長の給与は2万4175・55レアルが3万5462レアル、副市長の給与は2万1700レアルが3万1915・80レアル、局長の給与も1万9340・40レアルが3万142・70レアルに、各々調整される。
市公務員給与は市長給与額が上限と定められてるから、今回それが上がったことで、市職員も五月雨式に昇給されることになり、市財政にかなりのインパクトがあると見られている。