昨年10月29日、携帯電話の備品やその他小間物雑貨を販売する『ブラジシリオ(BRASISIRIO)』(Rua Onze de Agosto,64-Sé)がオープンした。聖市のメトロ・セー駅から徒歩1分、メトロ・リベルダーデ駅からもリベルダーデ大通り沿いに徒歩5分弱とアクセスに便利な場所だ。
オーナーは2014年にシリア難民として来伯し、昨年ブラジルに帰化したアブドゥルバセット・ジャロールさん(30)。店頭に立つのは友人のセネガル人移民のオマールさん。気さくで語学堪能なオマールさんが店番をするだけで、以前は少なかったアフリカ各国出身者のお客さんも増えた。
「パンデミックでオンラインの会議や授業が増え、携帯電話やパソコンが壊れる事が増えました。携帯電話の修理ビジネスにニーズが高まったことから店舗での修理を中心に始めましたが、修理には携帯電話販売会社などに高額な料金を支払わなければならず、今は携帯電話用品や雑貨、ビリェッテ・ウニコのチャージを販売しています」とアブドゥルバセットさんは説明する。
店内で修理はしていないが、携帯電話ビジネスに強い豊富なアラブ人ネットワークを生かして修理の相談も受けている。
シリア第1の経済都市アレッポ出身のアブドゥルバセットさんは、13歳の時から自分の店で携帯電話やCDを販売していたが、20歳で兵役につきシリア戦争が始まった。
ブラジルに来てからはウーバーの運転手やイベント業や講演活動を中心に生計を立て、2015年から移民と難民を支援するNGOの副代表を務め、昨年8月にはブラジル弁護士協会(OAB)の移民と難民の人権委員会のメンバーにも加わった。
店のある通りは裁判所に隣接し、サンパウロ弁護士協会の事務所のある一角で、アブドゥルバセットさんは既に顔なじみの人々が多い。
「元から不安定な仕事の状況だった難民や移民は、コロナ禍でさらに追い打ちをかけられました。しかし、前を見るしかありません」
戦火を逃れ、身一つで始まった多くのシリア人難民のブラジル生活だけに、前進し続けるしかない。
「今、レバノンでは大多数のシリア人が滞在許可をもらえず、まともな仕事もありません。レバノン人との壁も立ちはだかり、政治混乱とも重なってシリア人にとって最悪な状況です」と親戚のいるレバノンや世界各国に離散したシリア人の状況を憂う。
そんなアブドゥルバセットさんの合言葉は「シリアに平和を、世界に平和を、サラマレイコン(あなた方の上に平安を)」。
郷里シリアのアレッポ大学には日本交流センターがあり、日本文化や日本製品に興味があった。「日本は第2次世界大戦で米国に負けたのにどうして米国を嫌わないのか?」と、日本に素朴な疑問を投げかける。
「自由に出歩けるようになったら、店舗の横にはスペシャルコーヒーの店もオープンしています。ぜひコーヒーを飲みがてら『ブラジシリオ』にもお立ち寄りください」
※平日9時~19時(土曜日は9時~13時)まで営業。