ホーム | ブラジル国内ニュース | 《ブラジル》大統領が注射器購入止める=迅速な接種求める声高まる中=マラニョン州知事「誤った判断」

《ブラジル》大統領が注射器購入止める=迅速な接種求める声高まる中=マラニョン州知事「誤った判断」

入札差し止めを批判するマラニョン州知事(Divulgacao)

 新型コロナウイルスの感染再拡大で、一刻も早い予防接種の実施を求める声が高まる中、ボルソナロ大統領が予防接種実施に不可欠な注射器の入札を差し止めたと6日付現地サイトが報じた。
 英国の研究機関がブラジルの実効再生指数(Rt)が1・04に上昇したと発表し、感染拡大が確認される中、サンパウロ州知事は6日、同州が感染の第2波の中にいる事を認めた。
 同州保健局長は再度、25日から予防接種を開始する意向を表明。サンパウロ市ブタンタン研究所は6日、新型コロナの予防接種ワクチン「コロナバック」の緊急使用を申請すると共に、第3段階の治験結果を7日に公表する予定である事も確認した。
 予防接種の早期かつ迅速な実施は保健衛生の専門家や各州知事達も要請しており、保健省も1月中に予防接種を開始との姿勢を見せている。
 だが、サンパウロ州政府が12月21日に注射器と針を1億本ずつ購入すると発表したのに対し、保健省は8千万本ずつを国内、4千万本ずつを国外から購入(総人口の57%分)との意向を表明。最終的な目標は3億3千万組とされているが、12月29日の入札で購入できた注射器は790万本で、完全に出遅れた。
 保健省は4日にブラジル医療及び歯科用資材・機器工業会(Abimo)と話し合い、1月中に注射器と針3千万本ずつ購入の方針を固めた。1月中に新たな入札を行う事は同日中に公表され、3千万組の注射器と針を国内3社から購入の予定だったが、この入札を大統領が差し止めた。
 大統領は「国内各社が提示した値段は非常に高く、需要増加に乗じて引き上げた価格では購入できない」とし、各自治体には当面の使用に足りるだけの在庫があるから、通常価格に戻ったら購入すると説明した。注射器や針は各自治体が購入していたが、パンデミック後は保健省が購入や配布を統括している。

 ただ、入札差し止めに先立つ4日、保健省は注射器と針の輸出制限と国外から輸入する注射器と針の関税免除を要請。経済省が5日に検討する事になっていた。
 Abimoのパウロ・エンリケ・フラカロ会長は入札差し止めの報道に驚きつつ、政府が提示した価格は実態とかけ離れていると明言。他方、各州や保健省の在庫数は知らないが、政府が発表した接種計画通りなら、注射器や針の供給不足は起きないとも語った。
 保健衛生の専門家は、パンデミックの中で行われる予防接種は一斉接種であるべきで、全国民の70%以上が接種を受ければ感染拡大が抑制できるという。ただ、各ワクチンは有効率に差があり、必要な接種者数が異なる。有効率95%のファイザー社製は最低で52%、62%のアストラゼネカ製だと最低で62%の接種が必要だという。予防接種は2度行う必要があるため、どんなに急いでも1年以上かかる。
 マラニョン州のフラヴィオ・ディノ知事は6日、「ボルソナロ大統領は(憲法に則り、公益優先で緊急購入すべきなのに)再び誤った判断を下した」との表現で、入札差し止めを批判した。