国際的な人権団体のヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)が13日に「世界報告」を発表し、ボルソナロ大統領や現政権の新型コロナや環境問題などへの対応を厳しく批判した。
HRWは毎年、100を超える国の人権問題について報告書を出している。今回の世界報告は第31版で、ブラジルでの人権や人道上の問題についても項目を割いている。
ボルソナロ政権に関する項目の筆頭に挙げられているのは、新型コロナのパンデミックに対する取り組みだ。HRWの調査員の一人は、「パンデミックに対するボルソナロ政権の対応は悲惨なもので、流行当初から、新型コロナ感染症の重篤さを過小評価し、誤った情報を流した上、各州の新型コロナ対策を阻害しようとさえした。現在は予防接種に反対するキャンペーンを行っている」と要約している。
HRWによると、「新型コロナ感染症は単なる風邪(gripezinho)に過ぎない」と語った事や、感染拡大抑制のために知事達が出した外出自粛令を批判し、「リスクの高い高齢者は家に置き、若者は働きに出ろ」と言った事、保健省による新型コロナに関する情報公開を停止させた事などは全て、新型コロナに対する公共衛生上の対策を阻害し、その有効性を損なうもので、国民の健康という権利を侵害する行為だという。
HRWは、大統領や現政権が感染拡大抑制を妨げる行動をとった影響の一部は、最高裁や国家法務審議会、連邦議会によって軽減されたとも述べている。
最高裁は、各自治体の長に外出自粛令などの対策を採用する権限がある事を認めた。法務審議会は、刑務所が集団感染の場になるのを防ぐため、パンデミックの間は収監者の一部を軟禁などに切り替えるよう、判事達に勧めた。
連邦議会では、現政権の対策の対象外に置かれやすく、感染症にはより脆弱な先住民を守るための法案を提出、承認したりした。
HRWは、警官による暴力事件増加も大統領が火をつけた人道上の問題としている。
一例は、リオ州で20年1~5月に発生した警官による死者が744人に上り、集計方法を変更した03年以降で最多となった事だ。この期間中はパンデミックのせいで、外出する人の数や犯罪発生件数が減少していた。
サンパウロ州でも、1~7月の警官による死者は前年同期より9%増えた。ブラジル治安フォーラムによると、昨年上半期の警官による死者は前年同期比で6%増えた。
HRWは、現政権は、子供や青少年、女性、同性愛者や障害者などの弱い立場の人の権利を侵しているとも批判。例として、教育省が、男女の性差は学校で論ずるべきではないとした事や、同性愛の多くは崩壊した(不適合のある)家庭で起こるとした事などを挙げている。
障害者には包括的な教育を受ける権利があるが、特定の障害者のために隔離された学校創設を奨励する国家政策を発表した事も例示された。
環境問題については、先住民保護区での金採掘容認を含む先住民の権利侵害や、法定アマゾンでの森林伐採や先住民の死者増加、パンタナルでの火災増加も厳しい批判の対象となっている。(13日付G1サイトより)