【既報関連】クリスマスや年末で家族が集った2週間後、ブラジルは感染拡大の渦のまっただ中にいる。「私は今、起きるとは想像できない、最悪の悪夢よりもひどい現実に生きている。患者を診ることも、家族を落ち着かせる言葉をかけることも出来ない。この経験は一生のトラウマになるわ」―G1サイト14日付記事は、そんなマナウスの女性医師の叫びのようなコメントから始まる。
重症患者を収容できる公立病院が州都にしかないアマゾナス州マナウス市では医療崩壊が急速に進んでいる。14~15日付現地紙、サイトによると、同州では15日も他州への患者移送を行うなどして、患者救済を試みる一方、連邦政府への支援要請も出しているが、状況は一朝一夕では解決できないほど深刻化している。
14日付現地サイトによると、同州では酸素欠乏で窒息死する患者が発生し、30人の患者を他州へ移送する必要が生じた。また、窒息死を避けるために医療従事者が手動で人工呼吸を行っている様子や、医師達が自家用車で酸素ボンベを病院に運んだり、市民が酸素ボンベ確保に奔走する様子、遺体保存用の冷凍車などを映したビデオは多くの人に衝撃を与えた。
マナウス市での窮状は国内外のメディアでも報じられ、7州の州都と連邦直轄区が患者を受け入れる他、各地から酸素ボンベが届くなどの形の支援が具現化している。同市への酸素を供給する企業からの要請を受け、ベネズエラが支援を約束するなど、国外からも支援の手が伸べられようとしている。
同州のオズワルド・クルス財団(Fiocruz)研究員のジェゼム・オレラナ氏によると、マナウス市では8月に死者減少が止まり、感染再拡大を示す兆候が出ていた。同市では既に集団免疫ができているという調査報告が出た事で、早期に対策を取らないと医療崩壊が起きるとの警告は連邦政府からも州当局からも無視されていたという。
12月以降の感染拡大は第1波より顕著で、1月に入ってからは入院者数や死者数、埋葬者数が急速に増え、酸素その他の医療資材の不足も深刻化。他州からの支援のボンベや連邦政府からのタンク輸送も焼け石に水で、14日には「病院が(ナチスのガス室同様の)窒息室と化した」との衝撃的な表現が使われる状況に陥った。
14日現在の同州の感染者は22万3360人、死者は5930人で、同日のマナウス市の新規入院者254人(内陸部込みなら258人)は新記録を再更新した。
各地の支援としては、15日未明にサンパウロ州グアルーリョスからの空軍機2機が酸素ボンベ386本を届けた他、セアラー、ゴイアス、ペルナンブコ、マラニョン、パライバ、ピアウイ、リオ・グランデ・ド・ノルテ、連邦直轄区が感染者235人を受け入れる、サンパウロ州などが未熟児の受け入れを表明するなどが挙げられる。
連邦政府は12日、酸素その他の資材調達は州や市の責任としたが、検察庁や連邦司法支援局その他の公的機関は14~15日に連邦政府の責任と判断した。アマゾナス州知事からの支援要請を受け、外務省は14日、大量の酸素を輸送できる大型貨物機の調達を米国に要請した。
同州では、日本で発見され、同州でも確認された変異種ウイルスに30歳女性が再感染したが回復していた事も確認されており、この変異種が同州の感染再燃を増幅した可能性がある。この変異種は英国でも確認され、ブラジルなどの南米からの旅行者の入国が禁じられた。
今回注目されているのはアマゾナス州だが、11月以降の感染第2波は全国的なもの。12月12日のボルソナロ大統領の「感染終息目前」発言などによる気の緩みや年末年始の人出増で、今年に入ってからの感染者や死者の増加傾向は全国でより顕著になっている。