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東京=「日伯連帯研究所」が発足=コロナ禍で苦しむ在日伯人支援など

加藤仁紀代表

加藤仁紀代表

 認定NPO法人NGOブラジル人労働者支援センター(東京都所在、加藤仁紀理事長)は昨年の11月30日解散し、新たに日伯連帯研究所(ONG Trabras、東京都所在、加藤仁紀代表)が12月1日に発足した。
 解散前日の29日にも、首都圏内で美容室を経営していたブラジル人女性(50代、日系三世)が中小企業庁の「持続化給付金」で要件を満たす個人事業者に対し給付する100万円を申請するために都内のサポートセンターまで同行し支援した。
 女性はコロナ禍で収入が激減して美容室を廃業。その後、介護施設に就労するが重労働と2カ月ほぼ無休勤務で椎間板ヘルニアとなり解雇されてしまい、生活が困窮。11月半ば頃に前身団体へメールで生活保護の相談を持ちかけていた。
 加藤代表によると「給付金の申請と受付はオンライン。日本人でも苦労する人は少なくない」と女性も以前申請を試みたが失敗している経緯を説明し、「外国人はこのサポートセンターの存在自体知らないか、知っていても電話で予約を取り会場に行ける人は少ない。必要書類を完全に整えることも結構難しいのでは」と加えて指摘する。
 給付金を受けた後も生活困難が予想されることから、女性の住むところが決まり次第、介護施設の勤務実態を確認し、場合によっては労災申請を検討するという。
 こういった支援は通例、ブラジル人支援団体や労働組合などでも解決額の10%程度の手数料をとっているものだが、同団体では受け取っていない。ブラジルからの就労や生活の相談を無料で受けてきた。
 前身団体は、加藤理事長を初めとする早稲田大学海外移住研究会の南米移住経験者や在住者のOBを中心にして、2003年に東京都で発足した。在日伯人労働者支援や日伯交流活動、ブラジル日本移民の出版物を国立国会図書館や大学図書館へ収納する活動を行ってきた。
 一方で役員の高齢化が進み、従来の活動が継続困難との判断に至り解散する事となったという。また、在日伯人の労働問題も各地でコミュニティーが誕生したことで大きく安定し、30年前と比較すると相談件数も減少傾向にあるという。
 とはいえ昨年から続くコロナ禍で雇用関係が急激に悪化している事から、「今後も相談活動への注力は継続していく」という方針だ。新団体で新たなメンバーを加え、将来的には「日伯連帯」を旨に、日系人と日本人の連帯や日伯交流を重点に移していく方針だ。
 このほか、日伯両国の児童生徒が共に学べるという「日伯学園」のサポートも活動に含まれており、「日本政府も末永き日伯関係の絆作りのために強く期待する構想」と説明し「日系社会のご協力を心から願っている」と加藤代表は熱く語った。《日伯連帯研究所 ONG Trabrasホームページは(https://www.ongtrabras.org/)》