国際電話「日本はもうオシマイだ・・・」
「日本はもうオシマイだ・・・」――先週、静岡県に住む親戚から突然、国際電話がかかって来てそう言われ、心底驚いた。
日本政府は13日、緊急事態宣言に大阪・愛知・福岡など7府県を追加した。そのニュースを見て心配になり、居てもたっても居られなくって電話をかけてきたらしい。数年に一度しか連絡を取り合うことがない人なので、こちらの方が驚いた。
いわく「緊急事態宣言がお隣の神奈川、愛知県にも出た。静岡は挟まれた。もうダメかも」とおびえた様子。それを聞きながら、ちょっと考え込んでしまった。
NHK特集サイト(https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/data-all/)を15日時点で調べて見ると、日本の累計死者数は4420人。ここ1週間の死者数小計は457人、1日平均なら約65人だ。人口100万人当たりの死者数は33人。
ブラジル保健省コロナ・パネルサイト(https://covid.saude.gov.br/)によれば同日時点で、ブラジルでは累計死者数が20万8246人。ここ1週間の死者数小計が5615人、1日平均だと802人だ。
ブラジルでは100万人あたりの死者が980人もいる。100万人あたりで比べるなら、日本の約30倍も死んでいる。もう比べものにならない。
ちなみにサンパウロ州だけでみても、累計死者数は4万9600人、2週間分でみた1日当たりの平均死者数は217人もいる。これだけで日本全体の3・3倍になるが、医療崩壊はしていない。
札幌医科大学サイト(https://web.sapmed.ac.jp/canmol/coronavirus/death.html)の表1を見て比べてみてほしい。累計では死者数が世界2位のブラジルだが、100万人当たりで見ると、実はイタリアや英国フランス、米国、隣国アルゼンチンよりも少ない。まして日本などは微々たる状態だ。
伯国病床数は日本の7分の1で死者は30倍
しかも日本の医療レベルはブラジルよりも遙かに高い。世界のエリートクラブと言われる経済協力開発機構(OECD)の中でも別格だ。例えば人口1千人あたりの病床数は13床もある(https://data.oecd.org/healtheqt/hospital-beds.htm)。
そのOECDにすら入れずにもがいているブラジルは、2009年時点のWHO統計で2・4床しかなく世界69位だ。しかもどんどん微減して19年には1・9床まで減った。
つまり、病床数の比率でいえば7分の1しか持っていないブラジルが、30倍のコロナ死者を出している。だが医療崩壊しているのはリオ、アマゾン地方など局地的だ。
にも関わらず、例えば昨年12月12日付読売新聞電子版《第3波で「医療崩壊寸前、もう限界」…医大教授が語る「第1・2波との違い」》では、「現場感覚では、もう今が限界です」「2~3週間後に医療崩壊を迎えます」という台詞で始まる。
地震に喩えて言えば、欧米やブラジルがマグネチュード9なら、日本は余震程度ではないか。
ブラジルから見ると、重篤者数や死者数がこんなに少なく、医療レベルが高いのに、どうして「医療崩壊する」と大騒ぎする必要があるのか、まったくナゾだ。
頭を切り換えて、臨機応変に対応を!
ヤフーニュースに掲載された文春オンライン記事15日付《感染者は米国の30分の1以下…それでも“病床数世界一”の日本で医療崩壊が起きるワケ》には、興味深い分析が書かれていた。「文藝春秋」2月号に掲載された医療ジャーナリストでもある森田洋之医師の論文の抜粋だ。
そこに「日本の医療制度に欠けているのは、病床数でも、医師数でも、看護師数でもない。臨機応変に対応する『機動性』である」》(https://news.yahoo.co.jp/articles/bd5fc43cbf48ae728a636311b6da7cb8d82f0c15?page=3)とあるのを読んで、膝を叩いた。
医療崩壊するかどうかは、相対的な問題だ。患者数が多くても、その分、病床や医師などの対応能力が大きくできれば、サンパウロのように医療崩壊しない。逆にどんなに患者数が少なくても、対応能力が低ければ崩壊する。日本は本来持っている潜在能力が活かし切れていない。
「今は平時ではなく、有事だ!」と頭を切り替えるべき時ではないか。時速300キロ出せるスーパーカーに乗っているのに、強盗が乗る車に時速100キロで追いかけられて、「この道は時速60キロ制限だから」と最初から諦めて、わざわざ強盗に襲われているような感じだ。有事なんだから、約束事や法律はおいといてアクセルを踏んで250キロで逃げ切ろうとするのが現実的な対応ではないか。他の国は、言わなくても、みなそれをやっていると思う。臨機応変に頭を切り換えれば、本来の実力が出せるはず。
もう一点、日本国内ばかりに注目すると「大変なコトになった。どうしよう?」とアタフタしがちだ。だが世界から見れば日本は恵まれている。世界の中では、今も日本は立派なコロナ対応の優等生なのだから胸を張ってほしい。アタフタする必要は一切ない。
そもそもブラジルにはコロナ対策の国家レベルの指揮者もいなければ、病院も医療従事者も足りない。医療資材も資金もない、ワクチンすらも足りない。それでも何とかしのいでいる。
資金も能力も人材もある日本だから、頭を切り換え、制度の目詰まりをきれいに整え、仕組みに融通を利かすだけで問題は解決するのではないか。
問答無用に感染症の危険度を2類から引き下げるとか、緊急の臨時医療施設を各地にガンガン建てて資金を投じて医療関係者を集め、1カ月で沈静化させてほしい。政治家の力の見せ所だ。実際この状態が3月まで続いたらオリンピック開催は難しくなり、政権の支持率はさらにガタ落ちするだろう。今が正念場だ。
オリンピック開催国だけに「金メダル」クラスの解決策を、国民と政府が一丸になってやって見せてほしい。この「防疫」戦争を「国家総動員体制」でもって短期決戦をかけるタイミングだ。
でないと、外から見ていて不安になる。在外日本人が常に胸をはれる日本であってほしい。こんなときだからこそ「さすがは日本だ」と感心されるような、世界が驚くような模範的「金メダル」対応を見せてほしい。(深)