ホーム | 日系社会ニュース | コロナ後の未来を模索=3機関の代表が熱心に議論=日本語教育推進法に強い期待

コロナ後の未来を模索=3機関の代表が熱心に議論=日本語教育推進法に強い期待

左上から時計回りに須崎基金所長、門屋JICA次長、日下野理事長、モデレーターの横溝みえさん

左上から時計回りに須崎基金所長、門屋JICA次長、日下野理事長、モデレーターの横溝みえさん

 ブラジル日本語センター(日下野良武理事長)主催で、国際交流基金サンパウロ日本文化センター(洲崎勝所長)、JICAブラジル事務所(門屋篤典次長)を加えた3機関合同でのパネルディスカッション「ブラジルにおける日本語教育の意義と未来」が16日15時から1時間半、ZOOMを使って開催され、日本語教師や大学教員が常時90人近く参加した。同センター35周年特別イベント。


 司会の向井フェリッペ直人(なおと)さんは「昨年はコロナ禍で困窮し、センターの35周年式典も開催できませんでした。このイベントはそんな今だから原点に立ち返って、日本語教育の意義を共有し、未来にむけた取り組みを話し合うために企画されました」と主旨を説明。

全伯に加え、日本からも参加者がいた

全伯に加え、日本からも参加者がいた

 続いて日下野理事長が基調講演「ブラジルにおける日本語教育の意義と未来」を行った。その中で「コロナ禍に伴い、学習生徒数が減少したところもあり閉鎖された学校もあると聞きます。でも、先生方の努力によってオンライン授業が急進展し、遠隔地同士でもお話が頻繁にできるようになりました。まだ、この災禍がいつまで続くのかまったく予想できませんが、お互い情報を交換し、前向きに励まし合いながら乗り越えましょう。今はじっと我慢、我慢の毎日です」と呼びかけた。
 さらに昨年6月中旬に通常国会で成立した「日本語教育推進法」の具体案に対する強い期待を表明し、「日本語教師、学校、生徒とのつながりを密にする非営利団体のブラジル日本語センターに、ぜひ運営費交付金的な支援を考えていただきたいです。そこで具体的な提案です。ブラジルをはじめ中南米各国の日本語教師との連携を密にするため、同センター内に3人ほど日本語教育専門家を常駐させ定期的に各学校を巡回し、現況に適応した指導が直接できればと思います」との将来像を提案した。
 次に横溝みえさんがモデレーターとなってパネルディカッション「ブラジルの日本語教育と未来に向けて~2020年を振り返って~」が行われ、3機関の代表が意見を述べた。日下野理事長は「歴代のJICAや基金の所長には大変お世話になってきたい。このことを我々は絶対に忘れてはならない」と前置きし、「センターははっきりいってこのままでは続かない。さらなる日本語支援が必要になっている。コロナを機に新時代に入る。センターも新しくしていかなければ」と訴えた。
 門屋JICA次長は「アニメ、漫画から日本文化に惹かれる人に加えて、コロナで禅に瞑想に参加する人が増えたと聞く。日本文化は不安な時代に心を落ち着かせる。人と直接に会えない時代において、日本語を勉強することで世界が広がる。そんな意識を生徒と共有してみては」と提言した。
 さらに「百聞は一見にしかず。実際に日本に行って体験してもらうと動機が強まる。そんな日系研修の参加人数を倍増させたいと思っている」と明らかにした。
 須崎基金所長は「ついつい支援という言葉を使ってしまうが、日本語普及は我々基金の使命、存在意義でもある。日本語教育をどうしたらいいか、現場が一番知っている。現場の声を我々に伝えて」と呼びかけた。この間、たくさんのコメントや質問がチャットに書き込まれた。
 締めくくりに日下野理事長は「実際に顔を合わせて話すと、気を感じ、心を通わすことができる。でもオンラインでは難しい。悔しくてしょうがないが、我慢するのも日本文化。先生方も内にこもらず、相談ことがあればセンターに連絡して。これからも一致団結して盛り上げていきましょう」と気合いを入れた。