原材料到着の大幅な遅れにより、オズワルド・クルス財団(Fiocruz)が生産するオックスフォード・ワクチンの接種開始は当初予定の2月から3月にずれ込む可能性が強まり、ブタンタン研究所が生産するコロナワクチン、コロナバックへの依存度がさらに高まりそうな気配となっている。また、サンパウロ州での高齢者対象のワクチン接種は3月23日頃になりそうだと、20日付現地紙が報じている。
オックスフォード・ワクチンは17日にコロナバックと共に国家衛生監督庁(ANVISA)からの緊急使用許可を受けたが、現時点では接種開始のメドが立っていない。それは、ブラジル国内での治験や生産をコーディネートするFiocruzがあてにしている、インドからの完成ワクチン200万回分の輸入が、「国内需要優先」との同国政府の意向で先送りになっているためだ。
それに加えて、同ワクチンの原材料を所有しているアストラゼネカ中国工場からの輸入も大幅に遅れている。Fiocruzでは、その材料をもとにしたブラジル国内でのオックスフォード・ワクチン生産を20日から始める予定だったが、それすらできない状況となっている。
この事実はFiocruzが連邦検察庁に送った報告書で明らかになった。検察庁は昨年12月から、Fiocruzに対して、オックスフォード・ワクチンの国内接種までの予定を問いただしていた。さらに、11日にはインドからのオックスフォード・ワクチンの輸入、さらに同ワクチンをブラジルで製造する場合に使用する、中国からの原材料の輸入に関しても、その予定表の提出を求めていた。
Fiocruzが19日に明らかにしたところによると、中国からの原材料の到着は現時点で23日の予定だが、それもさらに確認の必要があるという。また、国内で生産したワクチンは、ANVISAから別の認可を受ける必要があるため、ブラジルで生産したオックスフォード・ワクチンの第一陣が供給できるのは3月初旬になるという。
これにより、コロナバックへの依存度がさらに高くなることになった。同ワクチンはそもそも、緊急使用許可を受けたあかつきには25日からサンパウロ州内での接種に使われる予定だったため、輸入した完成品だけで600万回分の在庫があった。これが、18日以降に全国に配布された分だ。
CNNブラジルが報じたところによると、コロナバックの治験と国内生産を担当しているサンパウロ市ブタンタン研究所は、昨年中に発注した原材料(有効成分1万1千リットル)の一部の到着を待っており、それが2月10日頃に届く見込みだという(19日付G1サイトでは来週中と報道)。新たに届くのは5400リットルの有効成分の予定で、ブタンタン研究所では800万回分(G1サイトによると550万回分)のコロナバックが生産できるという。
保健省はブタンタン研究所から1月中に800万回分のワクチンを受け取ることを期待している。ブタンタン研究所はこのほかにも、昨年中に輸入された有効成分を使ったワクチンの生産を行っており、18日にANVISAに対し、国内生産分のコロナバック480万回分の緊急使用許可を申請している。この分の製造は2月3日までに完成する見込みのため、追送分の原材料の輸入が遅れた場合、ワクチン製造は一時的に中断される。
保健省が全国キャンペーンで使うためにコロナバックを一括購入したため、サンパウロ州では12月に発表した予防接種計画の変更を余儀なくされている。だが、サンパウロ州では19日午後の時点で、すでに8470人が接種を受けている。目下のところは、新型コロナの患者や感染が疑われる患者に接する医療従事者や老人ホームなどに入所中の高齢者、先住民への接種が優先的に進められている。
サンパウロ市での接種は19日から始まったが、サンパウロ市保健局では、どれだけのワクチンを受け取るかと医療従事者への接種の進捗次第とした上で、3月23日からは75歳以上の高齢者への接種も開始したいとしている。