ボルソナロ大統領は26日、これまで消極的だったコロナワクチンに関して、一転して好意的に支持する発言を行った。その背景には支持率の急落があると見られている。大統領はまた、大企業がオックスフォード・ワクチンを購買することを支持するとも語っている。26、27日付現地紙、サイトが報じている。
ボルソナロ大統領は26日、投資家たちを相手にした会議の席で「わが国はコロナワクチンの接種数で世界第6位になった。もう少しすれば1位にだってなれる」と語り、「私たちは経済を止めることはできない」と語った。
この発言は驚きをもって迎えられた。ボルソナロ氏はこれまで、コロナウイルスを「ただの風邪」と称し、コロナ対策に消極的で、効用が証明されないクロロキンを治療薬として推奨していた。ワクチン接種にも否定的で、しばしば「国民に接種を義務化する必要はない」と発言し、米国のファイザー製薬のワクチンに関しては「接種をしてワニになっても君たちの責任だ」とまで語っていた。
実際にはブラジルのワクチン接種実績は70万人ほどで、サイト「アワ・ワールド・イン・データ」では第13位、人口10万人に対する割合では世界18位となり、大統領発言は正しくはない。だが、1位を望むような発言を行ったことは大きな変化として受け止められている。
その背景には、大統領がパウロ・ゲデス経済相をはじめとした閣僚の一部からコロナ対策に関して、態度を変えるよう説得されたことがあるという。大統領はアマゾナス州マナウス医療崩壊や、コロナワクチン確保や配布の遅れなどで厳しく批判され、世論調査での支持率を大きく下げたばかりだった。
加えて、「ワクチン接種開始は3月」との連邦政府の当初の予定を、22年大統領選のライバルのひとりと目されるジョアン・ドリア・サンパウロ州知事がサンパウロ州で独自に進めようとしていた接種計画に遅れをとらないよう、前倒しすることになったことも、大統領に対するマイナス・イメージにつながった。
この前倒しのために、ドリア知事が昨年から独自に購入を進めていた中国製のワクチンを利用することを余儀なくされ、「どこぞの知事のワクチンではなく、ブラジルのワクチン」と発言せざるを得なくなったことは記憶に新しい。
大統領は同じく26日、オックスフォード・ワクチンを開発するアストラゼネカ社からブラジル企業が3300万回分を購入するとするアイデアにも、「連邦政府としては奨励したい」との発言を行った。これは24日にフォーリャ紙が報道した内容に応えたものだ。
その報道によると、国内の大手企業がアストラ・ゼネカと投資会社のブラックロック社と交渉し、3300万回分のワクチンを購入し、その半分を保健省に寄贈するというものだ。この話を持ち込んだブラジル企業の中には食品大手のJBSや携帯電話大手のVivo、飲料大手のアンベヴなどの名があげられている。大統領は「半分をSUSに、もう半分を自社従業員ら提供するというのはいい考えだ」との見解を示した。
だが、アストラ・ゼネカ社はこの報道に対し、「各国政府や世界保健機関への供給を最優先しており、民間にワクチンを売ることはできない」と否定している。