ブラジルでの新型コロナウイルスへの感染者は28日現在で899万6876人(直近7日間の1日あたりの平均は5万1232人)、死者も22万2161人(平均1333人/日)に増えたが、コロナ感染症による死がもたらした各家庭への経済的な損失は51億レアルに上ると25日付現地紙、サイトが報じた。
この数字は、ジェツリオ・ヴァルガス財団ブラジル経済研究所(Ibre/FGV)が試算したもので、死者の約40%が集中しているサンパウロ州とリオ州の損失額は22億レアルに及ぶという。
各々の死者の価値は金銭では表せないが、コロナ感染症による死者の大半は家計を支える労働者や年金受給者であった事を前提に、本来なら家庭に入ってくるはずだった収入がどれほどだったかを試算したものだ。
Ibreが試算の対象としたのは、20年3月16日~21年1月15日に亡くなった20歳以上の人20万5100人。損失額は年額で算出された。
Ibreによると、死者の26・4%(5万4100人)を占めるサンパウロ州と14・7%(3万200人)を占めるリオ州では、20~69歳の人が得ていたはずの賃金収入は11億レアル、70歳以上の人が受け取れたはずの年金収入は11億レアルに達したという。
全国で見ると、20~69歳の死者9万1300人が失った収入は月額2億400万レアル、年収にすれば24億レアルに達する。リオ州では月2830万レアル(年3億3940万レアル)、サンパウロ州では月6290万レアル(年7億5510万レアル)で、同年齢層の人の死によってもたらされた所得喪失の45%は、2州に集中している。
新型コロナによる死者の多くは高齢者(12月19日の報道で74%)だが、ブラジルでは高齢者が受け取る年金が唯一の収入源という家庭や、唯一ではないが、年金が世帯収入に最も大きな割合を占める家庭が少なくない。亡くなった人が現役で働いていた場合の影響も大きい。
コロナで亡くなった人達に代わる労働者を雇う事はできても、故人が培ってきた技術や知識を補う事は不可能で、新規労働者の訓練や教育に費やす経費の増額や生産性低下といった影響は避けられない。
こういった事情を知るIbreのコーディネーターのクラウジオ・コンシデラ氏は、「(コロナ感染症による死がもたらした)損失は、さらに多くの人を貧困に追いやる」と嘆いた。
応用経済研究院(Ipea)の調査・計画部門技師のマリア・アンドレイア・ラメイラス氏も、「コロナ禍が終息して経済活動が再び活性化しても、コロナ禍で命を奪われた人々が失った所得は戻ってこないし、彼らが持っていた技術や知識も取り戻せない。20万人を超える人々を失った事による影響は、個人、社会の全てのレベルでこれからも続く」と語った。
新型コロナの感染拡大や死者増加を防げなかったつけは、これからも長い時間をかけて払っていくことになる。