企業家らの強い圧力を受け、コロナ禍における雇用維持策として昨年採用された、時短・減給プログラムを再実施する可能性が浮上してきた。ここにきて、経財省は緊急支援金の復活の可能性も示唆し始めている。28日付現地紙などが報じている。
時短・減給は、昨年3月に非常事態(カラミダーデ・プブリカ)宣言を連邦議会が承認した後に、経済省が採用した雇用維持策だ。このプログラムにより、企業側は従業員と交渉し、25%、50%、70%の3パターンで勤務時間を短縮し、その分の給与を削減することが可能となった。
この策は企業側の経済負担を軽減することで雇用を維持することを目的としており、削減された分の給与は失業保険から充当されることになっていた。
この法案の有効期限は繰り返し延長され、昨年12月いっぱいで終了した。昨年は、150万の企業と1千万人弱の労働者が時短・減額や一時帰休の契約を交わしている。
パウロ・ゲデス経財相は、この緊急法案を高く評価している。同相は、もしこの法案が成立していなかったら、企業はさらに苦しくなり、より多くの失業者を生んでいたととらえている。
だが、2021年はカラミダーデの宣言を行わない意向で、国家予算もそれを念頭に組まれていない。だが、昨年11月以降に再び悪化したコロナ禍により、企業が再び、20年のような時短・減給法案を求めている。
カラミダーデの宣言が行われていないため、現在は予算外の緊急会計を使うことができない。2020年はコロナ対策は別会計扱いであったため、連邦政府は「緊急雇用維持手当」として515億レアルの支出を行うことができ、給料を減らされた労働者の所得補填ができていた。だが、今年は非常事態が宣言されていないため、現時点ではこうした支出ができない。
ゲデス経済相は27日、ボルソナロ大統領との昼食会でこのことに触れたが、大統領からは「具体的な解決策を出すのはあと15日待ってくれ」と頼まれたという。
経財省内では、現時点では「カラミダーデ宣言の必要はない」との見方が主流だという。その代り、労働者支援基金(FAT)を減給された労働者への所得補填に当てられるのではないかと考えているという。
FATは失業保険やアボーノなどの各種のプログラムの資金提供や資金調達などを担っており、財源は統合社会プログラム(PIS)と公務員形成プログラム(Paesp)から構成されている。
だが、このやり方は経済省の中でも反対派が少なくない。特に反対しているのはバルデリー・ロドリゲス財政局局長で、まとまるにはもう少し時間が必要なようだ。
他方、コロナ禍の再燃で、20年に国民の好評を得た緊急支援金を望む声も高まっている。これに対する連邦政府の反応は消極的だ。ボルソナロ大統領は25日、緊急支援金の復活に関し「その可能性はない」と発言した。ゲデス経済相も26日、「もし、このまま死亡率や感染率が上がり続ければ」の条件付きで緊急支援金の復活はありうるとしたものの、「そのための犠牲は伴う」とし、カラミダーデや特別枠の支出を想定しない、予算内で何かの出費を削っての実施となる可能性を示唆した。
ゲデス氏は昨年12月に、「1日の死者の平均が1千人を超えるような事態が再び起きたら」と発言していたが、現在は既に1日の死者の平均が1千人を超えている。緊急支援金復活の犠牲には、公務員給の調整停止などが含まれているようだ。