ホーム | ブラジル国内ニュース | 《ブラジル》上下院議長選で大統領推薦候補が圧勝=裏で強まるセントロンの束縛=後継候補が惨敗したマイア前議長離党との噂も

《ブラジル》上下院議長選で大統領推薦候補が圧勝=裏で強まるセントロンの束縛=後継候補が惨敗したマイア前議長離党との噂も

当選で胴上げされるリラ氏(Cleia Viana)

 1日、連邦議会で議長選が行われ、下院がアルトゥール・リラ氏(進歩党・PP)、上院がロドリゴ・パシェコ氏(民主党・DEM)と、ボルソナロ大統領が推薦する候補が圧勝し、今後2年間、議長職に就くこととなった。2日付現地紙が報じている。
 議長選はまず上院から行われた。ダヴィ・アルコルンブレ前議長とボルソナロ大統領の推薦するパシェコ氏が、与党側のみならず、労働者党(PT)や民主労働党(PDT)などを含め、全部で10党の政党からの支持を受ける形で57票を集め、1回目の投票で当選した。
 対抗馬としてたったのはシモーネ・テベテ氏(民主運動・MDB)で、MDBと民主社会党(PSDB)、ポデモス、シダダニアなどの支持を得たが、得票数は21票にとどまった。この中には、直前になって出馬を取り消したマジョール・オリンピオ氏(社会自由党・PSL)、ジョルジェ・カジュル氏(シダダニア)、ラシエル・マルチンス氏(ポデモス)の票も入っている。
 当初はバレイア・ロッシ氏(MDB)との一騎打ちになると思われていた下院議長選は、連邦政府の根回しが功を奏し、1回目の投票の時点でリラ氏が過半数を超える302票を獲得、当選となった。バレイア氏は半分以下の145票と、惨敗だった。
 リラ氏の当選の背景には、ボルソナロ大統領が30億レアルを費やしたともいわれる、リラ氏への協力議員への特別手当策(議員割当金など)があったと言われている。

 だが、それと同時に、ロドリゴ・マイア前議長が推したバレイア氏をめぐり、懐疑的な声が相次いでいたことも事実だ。そのことはPSLやDEM、PSDBといった、当初、バレイア氏への投票を約束した政党の投票前の造反を招いた上、この日の投票でもバレイア氏と同じMDBのファビオ・ラマーリョ氏に21票が流れた。
 左派票もまとめたはずが、ルイーザ・エルンジーナ氏(社会主義自由党・PSOL)に16票、反ボルソナロ派の保守派でもマルセル・ヴァン・ハッテム氏(ノーヴォ)に13票、アンドレ・ジャポネス氏(アヴァンテ)に3票、キム・カタギリ氏(DEM)に2票、ジェネラル・ペテルネリ氏(PSL)に1票など、バレイア氏が反ボルソナロ票をまとめる代表になりきれなかったことも大きかった。
 ボルソナロ大統領はツイッターでこの選挙でのリラ氏、パシェコ氏の当選を喜んだ。ボルソナロ氏はこれで、アマゾナス州マナウス市での医療崩壊問題以来再燃していた罷免問題を避けられる公算が強まった。だが、現地メディアの見方では、ボルソナロ氏が本来の政治ポリシーとは異なる中道勢力セントロンに束縛される可能性が強くなることや、セントロンとの蜜月の長さを疑問視する声が目立っている。
 自身の後継者に擁立したバレイア氏がリラ氏に惨敗しただけでなく、所属のDEMさえもまとめられなかったことから、マイア前議長がDEMを離党するのではないかとの噂も強まっている。
 2日の議会では副議長や書記らの選挙が行われているが、識者たちの間では、セントロンが早々に実際の金の支払いや市民相などの指名権をめぐって、大統領に圧力をかけはじめるとの見方が広がっている。