パウロ・ゲデス経済相が、一度は否定していたコロナ禍に伴う緊急支援金の復活を「受給者は昨年の半分くらい」としながらも示唆しはじめた。その背後には、連邦議会の上下院議長からの圧力があることをうかがわせている。5日付現地紙が報じている。
緊急支援金の復活の可能性は4日、パウロ・ゲデス経済相が同省内で行った会見で示唆された。その会見には、1日に就任したばかりのロドリゴ・パシェコ上院議長が同席していた。
ゲデス経済相はこの会見の中で、「緊急支援金の復活はあり得る」と語った。ただし、同氏は「復活が実際に起こるかどうかは、然るべき条項の発動(非常事態宣言)が必要だ」と語った。
同経済相はこれまで、2021年の緊急支援金支出に消極的で、新型コロナの死者が1日に1千人を超えたら考える、予防接種購入資金は確保した、歳出上限の規定は破ってはならないなどと繰り返し発言。連邦政府は非常事態宣言(カラミダーデ)を延長しておらず、予算案でも緊急支援金支給のための財政確保を行っていない。
パシェコ議長はこの席で、「パンデミックが長引いているため、私は今、連邦議会が案じ、切実な必要を感じている緊急支援金の復活を求めるためにゲデス氏のもとに来ている」と発言し、「社会福祉の観点から言って、社会で最も脆弱な人々を助けるための、一刻も早く緊急支援が必要だ」と強調した。
それを受けてゲデス氏は、「財政状態は逼迫しており、支援金を実施するならば、(20年の受給者数である)6400万人ではなく、その半分くらいの数への支給となるだろう。残りの半分は既存の福祉プログラムの恩恵を受けているからだ。現状で迅速に行い得る緊急支援は、これが限界」と語った。
それを受けてパシェコ議長は「支援金の支給は慎重さと思慮深さを要することだ。だが、我々には人間としての繊細さが必要であり、議員また議長として、人道的な支援が必要であることを訴えるために来た」と訴えた。
ゲデス経済相はこの会見の前に、アルトゥール・リラ下院議長とも会談を行っていた。リラ議長との会談後、同経済相は「連邦政府はパンデミック下における財政運営の在り方を理解している」と話し、「連邦議会には(パンデミック対策と同時に)各種の改革を進めてほしい」と懇願した。
両院議長は3日にボルソナロ大統領と今年の連邦議会での審議の優先順位を確認した際も、「税制、行政改革と同時に、パンデミック対策を優先する」と釘を刺していた。
連邦議会が緊急支援金に関してこうした圧力をかけてくる背景には、国民の逼迫した経済状態がある。4日の中央銀行の発表によると、1月のポウパンサ(貯蓄預金)は、引き出し額が預け入れ額を181億5400万レアル上回り、歴代の新記録を更新した。これまでの引き出し超過の最高は昨年同月に記録した123億5600万レアルだから、今年の超過額は昨年を約58億レアル上回っている。
1月は例年、土地家屋税や車両税、私立校の入学手続きなどで出費が増え、ポウパンサの引き出しが増える。だが今年の場合は、失業率が高止まりし、インフレも続く中で緊急支援金の支給が打ち切られたため、収入減と出費増という窮状を乗り切るための預金の切り崩しが増えたとみられている。