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《ブラジル》大気汚染=年5万人以上が犠牲者に=経済面や健康面に多大な影響

昨年8月のパラー州での森林火災(1月28日付フォーリャ紙の記事の一部)

 世界資源研究所(WRI)ブラジルが1月28日に発表したところによると、ブラジルでは大気汚染による死者が年5万人以上出ており、生産性低下や公共衛生関連の経費増大、降水量の変化などを招いているという。
 WRIによると、ブラジルの大気汚染規制は脆弱だ。それは、全国環境審議会(Conama)が定めた、国の大気の質コントロール計画(Pronar)の基盤の一部が非合法で、後退するリスクがあるからだ。大気汚染抑制策は多くの都市の実情に合わず、実施されていない上、罰則適用もない。また、汚染物質削減のための明確なスケジュールさえない。
 汎米保健機関(Opas)が18年に出した報告書によると、ブラジルでの大気汚染による死者は年5万1千人に上る。
 また、健康と持続可能性研究所は同年、総人口の23%が住む6大主要大都市圏だけで、18~25年に12万8千人が死亡すると試算。これだけの人が亡くなる事で生じる生産性低下による損失は515億レアル、公的医療機関での入院経費は1億2690万レアルかかるという。
 世界保健機関の調査によると、世界人口の9割以上は質が良くない大気を吸っており、年間で、子供60万人など、計700万人が命を落としているという。この数字は戦争などのあらゆる原因の死者を上回る。
 別の調査では、アマゾンでの森林火災が多発した19年7~10月は、火災が原因の呼吸器疾患で2千人以上が入院。特に高齢者は49%、幼児は21%が大気汚染の影響を受けた。

 同年8月は300~450万人が森林火災で出た環境基準以上の粉塵にさらされており、森林伐採と森林火災による大気汚染が統一医療保健システム(SUS)に与えた年間損失額は150万レアルと試算されている。
 生産性についてはメキシコシティの製油所閉鎖との関連性を研究した報告があるが、二酸化硫黄に換算した汚染物質が20%減った事で健康上の問題が減り、閉鎖後1年間だけで1億1200万ドル、労働者1人につき年126ドルも、生産性が向上したという。
 また、化石燃料を使用する事で生じるオゾンを中心とする高濃度の汚染は、農業生産に影響を与える可能性がある。01年の北米での研究によると、オゾンの濃度が高いと、大豆の生産性が15~62%落ちるという結果が出た。オゾンによる大気汚染で生じる損失は年30億ドルに上る。
 WRIブラジルによるレビューでは、ブラジルの大気汚染管理における弱点として、データの欠如と法的枠組みの脆弱性が指摘されている。
 「大気汚染が改善される事で生じる経済面や健康面での恩恵は非常に大きい。大都市を走る公共交通機関が排出する排気ガスの規定を変えるだけで、街に経済効果が生まれる。
 温室効果ガス排出量、特に気候変動を招く短命な汚染物質の量削減による恩恵は大きく、ブラジルの経済競争力を高める。恒常的な政策導入が遅れれば、人命や国全体の生産性にも影響が及び、教育や格差の改善も遅れる」と、WRIの報告書は結んでいる。(1月28日付フォーリャ紙より)