ブラジルで緊急使用が認められたコロナワクチンのひとつであるオックスフォード・ワクチンに関し、南アフリカでの使用停止などの事態が続いており、同ワクチンに対する不安が高まっている。8、9日付現地紙、サイトが報じている。
南アフリカ共和国政府は7日、効用の低さを理由として、オックスフォード・ワクチンの使用を一時中断することを発表した。
同国によると、同国で見つかった変異株に対する同ワクチンの効用が22%しかないことが理由だという。同ワクチンは、重症化は防ぐものの、軽症の患者の発生抑制効果は22%に止まった。
この発表は世界保健機関(WHO)も不安にさせている。WHOのテドロス事務局長は8日、今回の結果に関する懸念を表明しつつ、「治験者の数が少なく、若くて健康な人に限られていた」「感染者の重症化を防ぐことが重要」として、慎重な姿勢を示した。
WHOが進めている開発途上国などへのワクチン供給計画(Covax)には同ワクチンも含まれており、国連の予防接種のスペシャリストによる戦略的諮問グループでも討議される。WHOの姿勢は同ワクチンの生産体制などにも影響を与える。
南アフリカの件は、同様の変異株がアマゾナス州マナウスで見つかっているブラジルにとっても心配の種だ。国内で緊急使用が認められているもうひとつのワクチン、コロナバックに関しては、ブタンタン研究所が9日、マナウス型と南アフリカ型の変異株に対しても有効性は変わらないと発表している。
オックスフォード・ワクチンは1月下旬にドイツが「65歳以上への接種は勧められない」と宣言したのを皮切りに、欧州諸国で高齢者への効用に対する不安の声が上がっていた。フランスのマクロン大統領も同ワクチンの使用を疑問視している上、8日にはポルトガル政府も65歳以上への接種を差し止めた。これに対し、製造元のアストラゼネカ社は今月、「高齢者への効用は示されている」との報告を行っており、ブラジル国内では正式登録への手続きも進んでいる。
ブラジルでは現在、世界17カ国で緊急使用が承認されているロシアのワクチン、スプートニクVや、国内の私立病院などが購入交渉を行っていたインドのバラット社製のワクチン、コヴァクシンの緊急使用が求められているが、承認のめどはまだ立っていないし、変異型への効用も不明だ。
にも関らず、ブラジル保健省はすでに、コヴァクシン2千万回分、スプートニクV1千万回分を購入する交渉を進めている。