ホーム | コラム | 樹海 | 《記者コラム》遂に逮捕された「ミリシア議員」

《記者コラム》遂に逮捕された「ミリシア議員」

18年10月のシルヴェイラ氏(左)(Twitter)

18年10月のシルヴェイラ氏(左)(Twitter)

 その瞬間は突然やってきた。だが、「ああ、やっとか。むしろ遅かったな」という気にもなった。17日未明の、ボルソナロ派下院議員、ダニエル・シルヴェイラ容疑者逮捕のことだ。
 三権分立を脅かす発言や、暴力をあおりかねない言動が問題視され、別名「デジタル・ミリシア(インターネット上の犯罪民兵組織) 」とも呼ばれることも少なくないボルソナロ派の政治家の中でも、シルヴェイラ氏の存在はひときわ異様だった。
 まずはその風貌だ。何も知らない人が彼を見て、「政治家」だと思う人はまずはいないだろう。筋骨隆々の体に、威嚇的な目つきの丸刈り姿。「政党」というよりは「どこの組の所属?」と言いたくもなる。これが日本の政党なら、まず身だしなみから矯正されていたレベルだ。
 そんなシルヴェイラ氏は行動そのものが議員当選前からずっと危うかった。2018年の下議選挙の際には、射殺事件の被害者であるマリエレ・フランコ元リオ市議の記念ネームプレートを叩き割って、事件を正当化するような行為を公然と行って有名になった。
 そのとき共に演壇に立っていたのは、現在停職中で罷免危機にあるウィルソン・ヴィッツェル・リオ州知事というのも、今となっては皮肉だ。
 また2019年には、「保守的な教育を行っていない」としてリオ市内の学校を無許可で侵入し偵察。さらに、所属政党・社会自由党(PSL)の下院リーダーに盗聴器を仕掛けた。
 昨年話題となった「反連邦議会・最高裁」の反民主主義行為、さらにフェイクニュースに対する連邦警察の二つの捜査でも捜査対象となっている。
 シルヴェイラ氏は、他のボルソナロ派よりも恐ろしかった。たとえば大統領三男のエドゥアルド下議やカルラ・ザンベッリ下議などは、もっぱら「口」や「文面」による挑発だった。
 だが、同氏の場合は自らが実際に行う行動が、相手への心理的脅迫につながる非身体的な暴力行為になっていたことだ。
 コラム子の中では圧倒的に彼が怖かった。こうしたことが積み重なった上での「最高裁判事を全員更迭せよ」「AI5の擁護」発言の投稿だ。処分が今回、予想された以上に重くなっているのも仕方がないといったところか。
 この逮捕に伴い、シルヴェイラ氏が軍警だった頃の実情も報じられている。フォーリャ紙の報道によると素行不良により「26日間の逮捕、54回の拘留、14回の警告処分」を受けていた不良警官だったという。
 彼はネット上で「ミリシア議員」とも呼ばれていたが、これが事実なら、そう呼ばれても仕方はあるまい。
 そして、今回のシルヴェイラ氏の逮捕は、ボルソナロ氏の大統領当選という大波に便乗して、どういうタイプの政治家が世にはびこったかを、世に知らしめる結果になったといえそうだ。(陽)