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《ブラジル》大統領長男に有利な判決=COAFデータも無効?=捜査自体が危機に直面=検察局、最高裁へ上告か

フラヴィオ上議(Tania Rego)

 連邦高等裁判所(STJ)の第5法廷は23日、ボルソナロ大統領長男フラヴィオ上議のリオ州議時代のラシャジーニャ疑惑に関して、銀行や財務上の情報開示命令を無効にした。リオ州検察局がこれまでフラヴィオ氏や他のリオ州議たちに対して行ってきた捜査の基となった金融活動管理審議会(COAF)のデータも無効にされており、ラシャジーニャ捜査自体が終わる可能性も示している。24日付現地紙が報じている。
 事の発端は、フラヴィオ氏がリオ州議だった2018年12月、雇っていた職員ファブリシオ・ケイロス氏の口座に2016年1月~17年1月にかけて120万レアルという不審な巨額振り込みが確認されたことだった。
 ラシャジーニャは幽霊職員などを使って給与のキックバックを行わせ、私腹を肥やす犯罪行為だ。ケイロス氏本人も実質的な幽霊職員で、振り込み人も同じく幽霊職員だった同氏の妻や娘を含む、ボルソナロ家の親類、知人が大半だった。
 以来、ラシャジーニャ捜査は進み、その過程でフラヴィオ氏に、共同経営していたチョコレート販売店を利用しての資金洗浄疑惑が浮上。さらに、フラヴィオ氏の光熱費や娘の養育費をケイロス氏が肩代わりして現金で払っていた不審な行動も発覚した。
 ケイロス氏はフラヴィオ氏の弁護士だったフレデリク・ワセフ氏が所有するサンパウロ州アチバイアの農場で1年間かくまわれていたが、2020年6月に逮捕された。フラヴィオ氏自身も、同年11月に資金洗浄と組織犯罪を計画・実行していた容疑でリオ州検察局から起訴された。
 それに対し、フラヴィオ氏の弁護側が、COAFによる情報が無効であることを主張して反論。この訴えがSTJに持ち込まれ、23日の審理となった。

 この日の第5法廷の審理では、報告官を務めたフェリックス・フィッシャー判事の「COAFからの情報は有効だ」とする見解に対し、他の4判事が揃って反対。検察がCOAFから得た情報も起訴内容から削除することが命じられた。
 支持を受けたのは、この日の審理に参加したジョアン・オタヴィオ・デ・ノローニャ判事の見解だった。同判事は、フィッシャー判事の分析は不十分で根拠に欠けるとし、ラシャジーニャ疑惑の捜査での銀行やその他の財産の動きに関する情報開示は不適切だと主張した。
 さらに、「COAFは捜査のための組織ではなく、情報の信ぴょう性も薄い」とし、リオ州地裁のファラヴィオ・イタバイアーナ・ニコラウ判事が認め、リオ州検察局がラシャジーニャ捜査で使用した、フラヴィオ氏やケイロス氏ら計95人に関するCOAFのデータも無効との判断を示した。
 COAFに関する審理は別途行われるはずだったが、ノローニャ判事は情報開示の件と合わせてその一部を先取りし、二つの件でフラヴィオ氏寄りの判断を示した。
 これに他の判事達も従ったため、フィッシャー判事が憤慨する一幕も見られた。
 ノローニャ判事はかねてから被告寄りの判断を示す傾向があり、今回もボルソナロ一家の意向に沿った判断を行った。同判事はしばしば、「最高裁の座を狙っているのでは」と現地紙に報道されている。
 リオ州検察局は今回のSTJの判断を「きわめて政治的な意向の強い判決」との見方をしている。同検察局は最高裁(STF)への上告も考慮している。
 フラヴィオ氏の陣営はイタバイアーナ・ニコラウ判事がとった一連の判断を覆し、ケイロス氏の容疑や勾留を無効とすることも狙っているという。