ホーム | ブラジル国内ニュース | 《ブラジル》最高裁ファキン判事=ルーラのLJ裁判無効に=来年大統領選に出馬可能=モロ救済策が裏目に出る恐れも

《ブラジル》最高裁ファキン判事=ルーラのLJ裁判無効に=来年大統領選に出馬可能=モロ救済策が裏目に出る恐れも

ファキン判事(Carlos Alves Moura)

 最高裁のエジソン・ファキン判事は8日、ルーラ元大統領がラヴァ・ジャット(LJ)作戦で抱えていた4件の裁判の判決を無効にする命令を出した。これは「ルーラ無罪」という判決ではなく、ラヴァ・ジャット作戦に関するルーラ裁判はパラナ州で扱うのは適当ではないという判断だ。そのため今後はブラジリアで行われることになった。
 この判断は抗告さえなければ大法廷にかける必要がない。ルーラ氏が第2審以上で有罪となり、フィッシャ・リンパ法に抵触していた二つの裁判が無効となるため、2022年の大統領選への出馬も可能となる。8、9日付現地紙、サイトが報じている。
 8日にファキン判事が無効にしたルーラ氏の裁判は、サンパウロ州グアルジャーの高級三層住宅を媒介とした収賄と資金洗浄容疑、サンパウロ州アチバイアの別荘の改築を介した資金洗浄と収賄の容疑。そして、ルーラ研究所設立に関する2件の収賄容疑の計4件だ。
 ルーラ氏はグアルジャーの三層住宅を巡る嫌疑で2018年1月に2審で有罪となり、フィッシャ・リンパ法に抵触した。ルーラ氏は同年4月の裁判で人身保護令を求めて裁判を起こしたが、判事投票の結果、5―6で却下され、服役。同年8月の選挙高裁の裁判でも不服申し立てが認められず、服役後も世論調査で支持率1位ながら、同年10月の大統領選に出馬できなかった。
 だが、19年6月に発覚した携帯電話のハッキングにより、LJ作戦主任判事だったセルジオ・モロ氏が、連邦検察パラナ州支部のLJ作戦班と蜜月関係にあったこと、同作戦班に命令まがいの行為を行っていたことなどが発覚。これは最高裁でも問題となり、これに関するモロ氏の違法性を問う審理が今月中に行われる予定だ。
 この審理ではかねてから、モロ氏が裁判に直接関与したグアルジャーの件が無効になる可能性が指摘されていた。だが、後任のガブリエラ・ハルト判事が1審を担当し、2審でも有罪となっていたアチバイアの件は覆すのが難しいと見られていた。だが、こちらも今回無効となったことで、ルーラ氏はフィッシャ・リンパに抵触しなくなった。

 ただし、四つの裁判の無効化は、パラナ州検察とパラナ州の連邦地裁が同件を扱うのは不適切と判断したためで、ルーラ氏に関する裁判は連邦直轄区の連邦裁判所に移管される。パラナ州連邦裁判所はこの判断後、捜査資料などを連邦直轄区の連邦裁判所に送付する意向を表明済みだ。
 ファキン判事が今回の判断を下した背景には、ラヴァ・ジャット作戦とモロ氏を救いたい意向がある。19年のヴァザ・ジャット報道、今年に入ってからのハッカーによるハッキング内容の全容公開以降、LJ作戦への風当たりが強くなり、同作戦の継続や過去の裁判が危機にさらされている。
 最高裁内でのLJ担当であるファキン判事としては、モロ氏への処罰を最も声高に求めているルーラ氏への判決を無罪にすることで、モロ氏への処罰をなくしたいところだ。ファキン判事は、ルーラ氏に関する裁判でのモロ氏の在り方に関して起きていた、最高裁への訴訟14件も消滅すると宣言した。
 だが「これでは逆効果」とする意見が最高裁では目立っている。グローボ局の取材に答えた最高裁の2判事は、「これでLJ裁判の見直しは圧力を受けることになる」と発言。さらにジウマール・メンデス判事も9日、第2小法廷でモロ氏の処遇に関する審理を強行して行うことを決めている。
 今回のファキン判事の判断はルーラ氏以外の裁判にも影響を与えると見られており、連邦検察庁が上告することを決めている。その場合は最高裁での全体審理になるが、専門家からは「最高裁でひっくり返る可能性は低い」と見る声が上がっている。最高裁内ではラヴァ・ジャット支持判事が減少傾向にある。