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《ブラジル》緊急支援金 下院もPECを1回承認=懸念された変更せずに=金額と支払い期限は未定

9日の下院(Pablo Valdares)

 【既報関連】下院で10日未明、コロナウイルスに伴う緊急支援金を2020年に引き続いて行うのに必要な緊急の憲法改正法案(PEC)の最初の投票が行われ、先週、上院が承認した内容のままのPEC本文が、3分の2以上の票を得て承認された。下院がもう一度、全体の3分の2以上の賛同をもって承認すれば、歳出上限法の枠外で認められる440億レアルを使って、緊急支援金を支給することが可能となる。10日付現地サイトが報じている。
 下院が10日未明に承認したPECは、4日に上院で承認されたものと同じ内容だ。ダニエル・フレイタス下議(社会自由党・PSl)を報告官としての審議は9日にはじまり、10日未明に投票結果が出た。9日の審議では、366対118票の圧倒的多数で、PECの本文が承認された。
 アルトゥール・リラ下院議長(進歩党・PP)は承認を急ぐべく、10日の内に、第2回目の承認に向けた審議を開始した。ここでも3分の2以上の票(308人以上)を獲得できれば、下院での承認が正式に成立する。
 緊急PECでは、前年度予算にインフレ率を乗じた金額を超える支出が生じる可能性がある場合に、歳出上限枠以外の支出を認める「ガチーリョ」と呼ばれる特別措置などを定めている。ガチーリョは、支出が歳入の95%を超える場合に使われ、国と地方(州、市)の双方が使えるが、国は、州や市への貸し付けの保証人となることはできない。
 また、非常事態(カラミダーデ)を宣言した場合の特別支出や、非常事態は宣言していないが、緊急支援を要する場合の支出もガチーリョに含まれる。上院が承認した440億レアルは、歳出上限枠外の金をガチーリョを使って使用する場合の上限だ。

 国や地方の予算は行政、立法、司法の三権毎に定められており、その枠を崩すことはできないし、ガチーリョを使わずに予算を超える支出を行った場合は、財政責任法に問われる。
 人件費などの義務的支出が支出総額の95%を超える場合は、給与調整や新規採用などが禁じられるが、PECの発効前に決められた調整は認められる。
 同PECが正式に承認されれば、経済省は緊急支援金支給のための暫定令(MP)を出す。現時点では、具体的な支給額、支給期間は定められていないが、パウロ・ゲデス経済相は8日、「男性には175レアル、家計を支える女性には375レアル」を支給するから、夫婦でこの額を受け取れば、平均で250レアルと話しており、ボルソナロ大統領が個人的に発言した250レアルとは理解が異なる。
 なお、下院が緊急PECを正式承認すれば、上院が当初審議しようとしたPECに含まれていた「教育と保健への投資額を削り、緊急支援金用の資金源とする」という案は正式に排除される。
 連邦政府側の意向に対し、野党側は「非常時の対策を求めているのに、政府は財政調整計画を重視している」として批判。「これではミニ行政改革だ」と揶揄する声まであがっている。ブラジル共産党(PCdoB)は、他国の例を挙げ、支出上限を撤廃する修正案も出している。10日の審議ではこれらの修正案の審議後、2回目の投票に入る。
 他方、ボルソナロ大統領は自身に近い下議に働きかけ、自身の票田である軍人や警官の便宜を図って、その給与調整差し止めをPEC条項から外すよう圧力をかけた。だが、リラ議長と報告官は、上院が承認した通りの本文を承認することで合意後に審議に臨み、PECの内容変更を阻んだ。PECの内容維持は中銀総裁も望んでいた。

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