「フォーラ、ドリア!」14日(日)正午、サンパウロ市パウリスタ大通りにジョアン・ドリアサンパウロ州知事を批判するデモの怒号とクラクションの雨が響き渡った。
サンパウロ州では6日から全域で外出自粛規制最大レベルの「赤」を実施していた。ところが、新型コロナウイルスの感染者増加、大サンパウロ市圏や内陸部で集中治療室(UTI)の占有率が90%を超える市の増加が止まらないため、15日(月)からさらに厳しい自粛措置「紫」レベルを導入した。それに対する反対デモが同大通りで行われた。
現場では、ブラジル国旗を車体に掲げた1千台は優に超えるであろう一般車から高級車まで、幅広い車種の車が片側車線に行列を作り、クラクションや持参したブブゼラなどを鳴らした。
デモを行う人々は「私達は働かなければ生きることができない!」や「自粛を強制するな!大統領と同じく経済の方が大事だ!」「市民に外出自粛を強いて、自分はマイアミ旅行に行くドリアを信じるな!」と猛抗議していた。
「フォーラ、ルーラ!」と最近汚職事件の裁判4件が無効になったルーラ元大統領に対して抗議をする声も多かった。
ブラジル全土では15日時点で約1148万人がコロナに感染し、約28万人が死亡している。一方で、コロナのために経済が低迷、会社や飲食店の大量倒産、企業による解雇などが目立っているのも事実だ。
外出自粛による感染抑制も重要なのもわかるが、「今日や明日の飯」が食えなくて抗議する人の気持ちも分からなくもない。
当地在住者としては、経済低迷により治安が悪化することも心配だ。感覚的ではあるが、コロナが始まって約1年、街中にいる物乞いが昨年より増えていると感じる。リベルダーデ駅の切符売場には常に釣り銭をせがむ人がおり、最近ではスーパーや電車の中でも金をせがむ物乞いも増えた。
コロナがもたらす不安感が、経済や政治の不安定感を倍増させて、国民の亀裂を深めている。その象徴的な場面が、パウリスタ大通りに展開された。
近い将来、国が一丸となってコロナ対策に取り組み、一刻も早くコロナが終息することを願うばかりだ。(淀)