コロナ禍が深刻化し、1日の感染者数や死者数、1週間の平均の感染者や死者数が連日記録更新中にも関わらず、ボルソナロ大統領は18日、連邦直轄区、バイア州、リオ・グランデ・ド・スル州の出した夜間外出禁止などを定めた知事令を無効にするよう最高裁に求める意向を表明。翌19日には実際に最高裁に訴えた。
大統領はその理由を、知事たちの行為は大統領だけが議会の承認を得た上で出せる緊急事態宣言(戒厳令の一種のエスタード・デ・シッチオ)に相当すると説明しているが、感染爆発抑制の足を引っ張るような行為だけに、強い批判を浴びている。18、19日付現地紙、サイトが報じている。
最高裁に訴えるとの意向は18日、ボルソナロ大統領が毎週木曜に行っているネット上での恒例の生放送であきらかにされた。大統領はここで、連邦直轄区、バイア州、南大河州が先ごろ発表した夜間の外出禁止などを含む対コロナの知事令は「経済活動の自由を脅かす」と批判した。
大統領はこの三つの連邦自治体に関し、最高裁に訴えて知事令を無効化させる意向であることも語った。
この大統領発言に対し、当該の知事たちの口からは、「知事令は全くもって合法的」(イバネイス・ロシャ連邦直轄区知事)、「知事と対立する時間があったらワクチンの対策をしてほしい」(エドゥアルド・レイテ南大河州知事)、「大統領はウイルスの支持者」(ルイ・コスタ・バイア州知事)などと、大統領を批判する発言が繰り返された。
これら3州はいずれも、集中治療室(UTI)の占有率が非常に高く、リオ・グランデ・ド・スル州では全国で最悪となる100%を超える占有率を記録。バイア州では2月からロックダウンを行っている。
ダッタフォーリャが15、16日に行った世論調査では、国民の79%が「コロナ禍は今、制御不能な状態となっている」と回答。「部分的に制御できている」は18%、「制御できている」と答えた人はわずか2%だ。
「コロナへの感染が怖いか」の質問も、「すごく怖い」が55%、「少し怖い」が27%で、計82%が恐怖感を抱いていることも明らかになっている。「恐れていない」は12%、「もうすでに感染した」が7%で、恐怖を感じていない人は国民の2割にも満たない。
ブラジルにおけるコロナの死者数は2週連続で世界一を記録。18日には、ブラジルの1日の死者数は2位から7位の数を足した数よりも多いとまで報じられている。
このような状況下で行ったライブで批判が起きたことを察知したのか、それとも、現状の深刻さを認識しなおしたのか、ボルソナロ大統領は19日午前、大統領官邸前にいた支持者たちの前で、「やりたくはないが、エスタード・デ・シッチオを発令する時は近づいている」「君たちにその準備はできているか」と語った。
この時の発言では、「多くの犠牲者が出ているのに気にもしないと私を批判したがるが、飢えや生活苦も餓死や自殺を招く。知事たちの行為で餓死や自殺が起きる前に、連邦政府がそんな事態を招く措置を採らなければならないのか?」とも尋ねている。エスタード・デ・シッチオは大統領だけが出せる緊急事態宣言(いわゆる戒厳令)で、逮捕状なしの逮捕や言論統制なども認められる。
19日午後はこれらの発言をめぐり、政治家たちからも大統領への強い批判が飛び交っていた。
なお、リオ・グランデ・ド・スルでは19日、1月14日のマナウス同様、病院内の酸素の供給が止まり、人工呼吸器を使用中の患者26人中6人が死亡する事態も起きた。病院側は6人の死亡が窒息死かは不明としているが、酸素の供給が30分ほど不安定だったことは認めた。