CNNブラジル17時53分配信記事によれば、23日のコロナ死者は新記録となる3251人となり、累計29万8676人、いよいよ30万人台が目前となった。感染力の強い新型コロナ変異株と現状軽視の3密が感染者急増や医療崩壊を招き、経済・産業界の公開書簡を受けても、ボルソナロ大統領の否定主義は変わらないと22、23日付現地紙、サイトが報じた。
3月の死者は19日の時点で月間最多だった昨年7月の3万2881人を超え、死者最多月となっている。23日の累計感染者数は1213万19人に急増している。
感染者急増は、集中治療室(UTI=ICU)などの病床占有率の急上昇を招いた。UTI占有率が9割を超えると、空き待ちで死亡する患者も出る。
空き待ちの患者死亡例や、現場の医師や救急隊員が誰を救うかを選ばねばならない事態は昨年も起きたが、マナウス市やリオ市などに限られていた。
だが、今年は空き待ちで死亡する患者や誰を救うかを選ばねばならない州が増え、南部3州やサンパウロ、ミナス、連邦直轄区などでも現場の医者が「命の選択」をする酷い状態が発生している。
一例は、連邦直轄区の病院の床に患者の遺体が放置された写真や、ベッドがなく、床で蘇生術を施したが助からず、絶望した看護師の写真なども流れたもので、サンパウロ市では1日の死者が400人を超えたら夜間の埋葬も行う事を決めた。病院での酸素不足も深刻で、サンパウロ市では2日連続で患者移送が必要となった。
22日付エスタード紙によれば、14州と連邦直轄区では1日平均の死者が30日間で倍以上に増え、7州は3倍増だ。突出しているのは、リオ・グランデ・ド・ノルテの282%増やセルジッペの213%増で、セアラー196%増、パライバ188%増、マット・グロッソ181%増などと続く。ゴイアスやリオ・グランデ・ド・スルでは20日間の死者が1~2月の死者累計を超えた。
患者の急増は人工呼吸器装着時に必要な麻酔薬などの薬品キット(kit intubacao)の不足も招いており、私立病院は先週、今週初めに在庫が尽きると保健省に訴えた。保健省は昨年8月にキット購入契約をキャンセルしており、公立病院も1~2週間で底をつく。
保健省は無認可のメーカーからも薬品や資材を購入しようとしたが、調達は困難で、汎米保健機関(OPAS)が22日に支援を表明。同キットは3カ月間で1700%も値上がりしている。
関係者は薬品キットの不足は驚異的な死者増を招くと警告しており、サンパウロ州保健局は23日に死者1021人、入院患者も増加中と発表した。
経済・産業界の声は大統領に届くか
ゲデス経済相やテメル前大統領らは、「経済は回復可能だが人命は回復不能」とし、効果的なコロナ対策の必要を訴えている。モウロン副大統領も先日、「マスク着用や社会隔離を訴えなかったのは間違いだった」と発言した。
同様の声は、政権の枠を越えた財相や中銀総裁の経験者、主要な銀行家やファンド、最大手企業家ら重量級の経済人から連名で起き、「否定主義はやめ、マスク着用や社会的な距離確保、ワクチン接種迅速化、コロナ対策の国家機構創設などの効果的な措置を」と求める公開書簡には1554筆の署名が集まった。
同書簡は22日に三権の長に送られたが、ボルソナロ氏は再び、厳しい規制導入に反対。方針転換は容易ではない。三権の長や検察庁長官は24日、一堂に会し、コロナ対策について話し合う。