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《ブラジル》最高裁がモロ判決に「偏りあり」判断=カルメン判事の見直しで逆転=LJでのすべての判決無効も

モロ氏(Lula Marques)

 最高裁第2小法廷は23日、セルジオ・モロ元ラヴァ・ジャット(LJ)作戦担当判事が「ルーラ元大統領の裁判に関して公正だったか」の判事投票の続きを行った結果、3対2で「偏りがあった」が上回った。一時はカシオ・マルケス・ヌーネス判事の投票で、「公正だった」が上回ったが、カルメン・ルシア判事の判断逆転でひっくり返った。23、24日付現地紙、サイトが報じている。
 今回の審理は3月9日に行われたものの続きだった。そのときは、5人の判事のうち、ジウマール・メンデス、リカルド・レヴァンドウスキーの両判事が、ルーラ元大統領に対し、サンパウロ州グアルジャーの高級三層住宅を介した収賄、資金洗浄の容疑で9年6カ月の実刑判決を下したモロ元判事の判断は「偏りがある」とし、エジソン・ファキン、カルメン・ルシア両判事が「公正」と判断していた。同日の投票は、カシオ・ヌーネス・マルケス判事の再考要請で中断された。
 カシオ判事は23日の審理で、「ハッキングという違法行為で判明した内容で、これまでの判決内容を問いただすのは断固としておかしい」との理由で、モロ氏の判断を「公正」であると主張した。
 これに対し、「(違憲とされている検察との協業などを行った)モロ氏の行為はブラジル司法史上最大のスキャンダル」とまで言い切っていたメンデス判事が強く反発。「モロ氏が不公正な証拠ならいくらでも出ている」と主張したメンデス判事は、「臆病な判事は救いようがない」とカシオ判事を罵倒した。

 ヴァザ・ジャットは報道のたびに、ハッキングされた内容が携帯電話の通信内容と同じであることが確認されており、矛盾する報道も行われていない。また、カシオ判事はボルソナロ大統領が指名した最初の判事で、かねてから大統領に有利な判断を行うことで知られており、今回の審理でも、出馬が可能ならば、22年の大統領選でボルソナロ氏の最大のライバルとなると見られるルーラ氏に不利な判断を行うことが予想されていた。
 カシオ判事が「モロは公正」と主張したことは、「ルーラ有罪判決は正しいから彼は来年の選挙に出られない」を意味する。それを裏付けるように、ボルソナロ氏は16日、「ルーラ氏は22年に出馬できなくなる」という意味深長な発言を行っていた。
 これによって、3―2で「モロ氏は公正」が多数になるところだった。だが、かねてから「自身の判断の見直し」をほのめかしていたカルメン判事が、「弁護側から上がってきた新たな要素により、モロ氏に偏りがあるとの判断を行う」とし、これで賛否の票数が逆転した。
 この審理により、ルーラ氏のものだけでなく、モロ元判事がLJ作戦で下したあらゆる判決が無効になる可能性が生まれている。そのことはすでに、今回の審理で報告官をつとめたエジソン・ファキン判事が認めている。同判事は最高裁のLJ作戦担当として、モロ氏の不公正をもっとも激しく訴えていたルーラ氏の裁判を無効にすることで、今回の審理でモロ氏をかばおうとしていた。
 ファキン判事が8日に下した、LJ作戦におけるルーラ氏の裁判無効化に関する最高裁での全体審理は4月に行われると見られている。