《ブラジル》セントロンと大統領の蜜月終了?=下院議長「議会には劇薬ある」と罷免ほのめかす=保健相人事と三権の長会議で亀裂露呈
アルトゥール・リラ下院議長(進歩党・PP)は24日、下院でボルソナロ大統領の罷免をほのめかす演説を行った。ここ数日、大統領と中道勢力「セントロン」との関係悪化が伝えられ始めた矢先のことだった。25日付現地紙が報じている。
24日、リラ下院議長は下院での審議の席で、ボルソナロ大統領の名こそあげなかったものの、婉曲的な言い回しで大統領罷免の可能性を口にした。この発言は、同議長がコロナ対策で三権の長たちが一斉に顔を合わせた会議の件に触れた時に出てきたもので、「議会政治の劇薬はよく知られているとおり苦いもので、時には致命的であったりもする。それは負の連鎖が制御できなくなるときに何度も使われてきたものだ」と罷免審議をほのめかした。
同議長はさらに、「我々としては、(大統領が)自分自身の知性や感情をもって現在の状況を治癒することを望んでいる」と大統領に方向修正を促した。
大統領罷免の鍵を握っているのは下院議長だが、リラ議長は現状に関して「(大統領を罷免から守るかどうかは)黄色信号だ」とまで言い切った。
ボルソナロ大統領への罷免請求の数は、在任2年2カ月の今年2月の時点で、2016年に罷免処分を受けたジウマ大統領が5年を超える在任期間中に記録した68通を上回っている。
ボルソナロ氏の罷免審議を止めていたのは、リラ議長も所属するPPを中心としたセントロンの存在であったが、すでに今年の1月頃から、セントロン内でボルソナロ氏の罷免を求める声が浮上していた。その直接的な契機となったのは、1月にアマゾナス州マナウスで起こった医療崩壊だった。
セントロン内での大統領罷免を求める声は先週、一気に高まった。それは、ボルソナロ大統領がリラ議長をはじめ、セントロンが次期保健相として推薦していたルジミラ・アジャール氏ではなく、自身と個人的なつながりのあったマルセロ・ケイロガ氏を選んだためだった。
自分の方向性とは違う人材を保健相に選ばなかったことで、政党リーダーたちは「大統領には厳格なコロナ対策を行う意思がない」と解釈。それが、大統領罷免と、医療崩壊に関する連邦政府やパズエロ前保健相の責任を問う議会調査委員会(CPI)を求める声を強めてしまったという。
リラ議長とロドリゴ・パシェコ上院議長(民主党・DEM)の2人が22日に、大統領抜きで企業家や私立病院の関係者らと会議を行ったことも、意味深長ととらえられている。
ただし、こうしたセントロン内の動きに対し、かつてはボルソナロ氏が所属していたPPのシロ・ノゲイラ党首は、大統領支持を改めてアピールしている。