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JICA=日系社会リーダー育成事業=オンライン研修で繋がり強化

取材に応じる6人。上段左からJICA南米部の藤井さん、海外日系人協会の佐藤さん、寺島さん。下段左からOB山本さん、アサトさん、OG末永さん

取材に応じる6人。上段左からJICA南米部の藤井さん、海外日系人協会の佐藤さん、寺島さん。下段左からOB山本さん、アサトさん、OG末永さん

 「二つの文化を知る自身のバックボーン自体が活かせるものだと気付きました」―3日間のオンライン研修の2日目、研修終了後の取材に対し、アサト・ルイス・アルベルトさん(四世、ペルー、24歳)は気付きについてそう語った。
 国際協力機構(JICA)中南米部は「日系社会リーダー育成事業」のオンライン研修を3月1日から3日間開催。日本で活躍する日系起業家やOB・OG5人を招き、現役留学生23人が聴講し『日系社会のリーダー』について考えた。
 現役留学生のアサトさんと寺島マリソル(三世、アルゼンチン、32歳)さんが取材に応じた。以前は「自分の専門をどう日系社会に活かせばいいかわからなかった」というアサトさんも、「先輩方の話を聞いて二つの文化の懸け橋となる」活かし方があると気付いたという。
 寺島さんは体験談を通じ「自分が過ごしている日々も、OB・OGの方にも過去に通った道なのだなと実感し、聞けてよかったです」と交流を通じ勇気付けられた様子。
 1日目は海外送金サービス「キョウダイ・レミッタンス」を運営する株式会社ウニードスの木本結一郎代表取締役社長、3日目には渉外法務関係の翻訳・通訳を行う合資会社イデア・ネットワークの松本アルベルト代表が日本の日系起業家として講義した。
 3日目には日本に留学経験を持つOB・OGの5人が参加。5グループに分れて留学中や修了後の経験談などを紹介し、意見交換など行った。
 ブラジルからは現在サンカルロス連邦大学助教授の山本ロブソンさん(二世、47歳)や、国際交流基金サンパウロ日本文化センターに勤める末永サンドラ(三世、45歳)さんが参加。
 山本さんが中心となる農学系グループでは「農業的な課題だけでなく、コミュニティに対して何が出来るかを考え、こちらの生活をどう向上させるかを考えることが大事だ」と結論づけた。
 末永さんが中心となる教育学グループでは、自身の修士課程中でのコミュニティ構築やキャリア形成などを紹介。自分にあった研究グループを見極める事でコミュニティが形成でき、アンテナを張る事が大事とアドバイスした。
 他グループでは「日本に来た南米の人が直面する障壁」に対し「二つの文化の懸け橋となる」事や「コロナ禍により、ネットワーク構築や維持にITやテクノロジー技術の活用が重要となる」などの総括がなされた。
 留学生はこのコロナ禍の中で、日本生活の不安や学業への負担が増す中で就学しており、「一人で乗り越えるのは難しいのではないか」という心配や「OBとの繋がりを強化していくために開催しました」とJICA中南米部の藤井寛之さんは経緯を語った。
 研修開催のため今回OB・OGを集めた公益財団法人海外日系人協会の佐藤なぎささんによると、以前から日本国内のOB・OGを招いての研修は開催されていたが日本国外から招くのは初めての試み。「修了後の将来に悩む人も勿論います、今すぐリーダーになる事は難しいかもしれませんが、少しずつ経験を積んで日本や中南米のリーダーとして活躍してほしいです」と期待をこめた。