最高裁のカシオ・マルケス・ヌーネス判事は復活祭の前日の3日、信教の自由を理由に、宗教施設での集会開催と信者の参加を全国的に認める判断を下した。ブラジルでのコロナ禍での死者が過去最高を連日更新する中での物議をかもす判断となった。4日付現地紙が報じている。
カシオ判事の判断は、全国福音派法律家協会(Anajure)の請求を受けてのものだった。カシオ判事はこれに対し、「コロナ禍での衛生ガイダンスに従い、宗教施設の収容人数の25%で宗教行事の開催を認める」との判断を下した。
カシオ判事はこの判断の理由として、「2010年に行われた国勢調査では、国民の80%がキリスト教信者である」ことをあげ、キリスト教会の主要行事である復活祭を祝うことを可能とする判断を下した。
今回のカシオ判事の判断には、連邦政府の意向が強く反映されている。同判事はボルソナロ大統領が指名した最初の最高裁判事であり、訴えを起こしたAnajureも熱心な福音派として知られるダマレス・アウヴェス女性家庭人権相が創立に関与している。また、アウグスト・アラス連邦検察庁長官もサンパウロ州政府に対して教会行事の自由を認める請求を出していた。同長官もボルソナロ大統領に指名されて長官となっている。
この判断に対し、ミナス・ジェライス州州都ベロ・オリゾンテのアンドレ・カリル市長は、「断固として教会行事は認めない」と反旗を翻した。だが、3月29日に国家総弁護庁(AGU)長官に復職したアンドレ・メンドンサ氏が、カリル市長がカシオ判事の判断に従うよう求める請求を出すなどして援護射撃を行い、同市長が断念する一幕もあった。同市長は最高裁に上告する意向だ。
今回の判断は、ブラジルでの直近1週間のコロナウイルスの1日平均での死者数が3千人を超えている状態の中で行われたことで、問題視されている。4日の復活祭では、集会開催を自粛した教会もあった一方、カシオ判事の規定を大幅に上回る人数が集まり、混雑が生じた教会もあったことが報じられている。
カシオ判事の判断は最高裁内でも反対意見が強い。また、外出規制を強化している自治体の長らは即日、フクス最高裁長官に同件に関する態度を明らかにするよう求めた。
アラス検察庁長官とAGUは1日、サンパウロ州での集会禁止措置に反対する社会民主党(PSD)からの訴えに関し、州や市の外出規制を緩和すべきとの意見書を最高裁に提出していた。だがPSDからの訴えを受け取っていたジウマール・メンデス判事は5日、サンパウロ州での教会行事(信者が参加してのミサ、礼拝)の禁止を継続する命令を下すと共に、同件を最高裁の全体審理にかけるよう要請した。全体審理は7日に行われる予定で、カシオ判事の判断は却下される可能性が大きい。