「将来的には日系医師の育成にも注力していきたい」――サンタクルス(以下SC)病院を運営するSC日伯慈善協会の新理事長に、先月就任した佐藤マリオ(二世、65歳)新理事長に今後の抱負を尋ねると、そう意気込んだ。同日伯慈善協会は3月15日に20年度定期評議会で石川レナト理事長が勇退し、第一副理事長だった佐藤氏が選任された。翌16日に両氏と柳澤智洋渉外担当が挨拶のため来社した。
佐藤理事長は2000年から03年の横田パウロ理事長時代にも財務理事として在籍していた。15年に石川氏の声かけで再び理事に戻り、18年から第一副理事長になった。
75年に南米銀行に入行。80年にその海外技術研修プログラムで山形銀行に9カ月、東京の富士銀行でも2カ月の研修を受けた。85年から87年に日本国文部科学省国費留学生として一橋大学商学学研究科でも学び、日本語が読み書きまで堪能だ。帰伯後はブラジリアで10年余り、南米銀行出張所を統括した。
筑波大学サンパウロオフィスのコーディネーター八幡暁彦(やはた・あきひこ)さんが同じ一橋大学商学部卒の縁から、6年ほど前に同大学とSC病院の交流がはじまった。16年には同大学医学群、医療群、付属病院とSCの間で連携協定締結が交わされた。学術交流が盛んになり、コロナ禍前までは医師の研修留学が毎年実施されていた。
昨年は、SC病院で医療分野における研究強化をするためにSC学術研究会(IPESC、西国幸四郎所長)が発足。筑波大学や九州大学、大阪大学などと人的交流を行い「優秀な医療人の育成」のための組織を目指している。
伯国内のオズワルドクルス財団などの研究機関との連携も行い、臨床研究を充実させている。いずれはIPESC内に医科コースを作り、遠隔教育により日本の最先端医療を学ぶほか看護師の教育にも活用していく方針だ。
今年はJICAの支援を受けて、がんセンター大幅改修を実施する。22年診療開始を目途に工事計画を進めており、佐藤理事長は「まずはがんセンター完成」、次に「IPESC拡張工事」を当面の目標に掲げる。
両構想は石川前理事長時代からの方針を踏襲した「3つの調和/関係強化」のうちの「日本との調和/関係強化」方針に含まれる取り組み。
このほか「患者との調和/関係強化」として、患者に対し安全な医療を提供するのを大前提に、日本の伝統であるおもてなしサービスの強化、患者の声を迅速に医療サービスに反映することを徹底、アフターケアによる定期的な連絡を行う。
最後の「院内の調和/関係強化」では、コロナ禍後もオンライン会議の重要性が続くという見方から、コミュニケーション能力の向上と円滑化・簡素化し、職種職位を超えた密な合同連絡会議や末端の職員まで伝わる伝達手段の強化を図る。
新型コロナウイルスで受けた経営ダメージの立て直しをはかりつつ、ONA(国家認定機関)認定レベル3の取得を目指していく目標も掲げる。新型コロナウイルス感染症のパンデミックが始まった昨年3月から2カ月間の手術数・検査数は、通常の3分の1以下となっていた。
同院ではコロナ禍後、感染症が疑われる患者と一般患者の動線を完全に分け、院内感染対策を徹底している。「一般患者の方には安心して受診に来てほしい」と佐藤理事長は呼びかけた。
なお、2月にはPCR検査ラボを強化し、24時間以内に陰性証明書を発行する体制を整えた。PCR検査の予約専門サイト(https://www.hospitalsantacruz.com.br/teste-pcr/)、24時間日本語対応の緊急コールセンター・ワッツアップ(11・97572・4602)、ポ語予約用ワッツアップ(11・94142・7684、平日9時~18時)も設置されている。
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