ボルソナロ大統領は7日、サンパウロ市で企業家たちとの晩餐会を行った。この会合は、新型コロナ対策を不満とする財界の重鎮たちと一堂に会し、信頼関係を回復させるためのもの。ボルソナロ大統領はその場で「ワクチン接種の加速化」を約束させられた。8日付現地紙、サイトが報じている。
今回の晩餐会は、コロナ禍が再び激化したのに現政権の対応が鈍く、経済にも大打撃が生じていることを懸念する経済界の重鎮や銀行家、企業家が多数の署名を寄せ、公開文書を送付してきたことがキッカケ。それを重く見た連邦政府のスタッフからの希望で実現した。
政府側は構造改革を中心の話題にする意向で、会議には、大統領のほかにパウロ・ゲデス経済相、タルシジオ・デ・フレイタス・インフラ相、マルセロ・ケイロガ保健相、ファビオ・ファリア通信相といった閣僚や、中銀総裁のカンポス・ネット氏までが参加した。
この日の会合の参加者には公開文書の中心ともいえる重鎮らはおらず、18年選挙の時からの支持者なども含まれていたが、それにも関わらず、参加者たちが最も口にしたのは、「コロナワクチンの接種の加速化」だった。
参加者の大半は、経済活動を本格的に回復するためにも、ワクチンを早期かつ広範に接種することでコロナ禍を抑えることが不可欠と考えており、人によっては「年内の解決」を求める人までいたという。
ボルソナロ氏はこれまで、支持者を喜ばすような「否定論者」的言動を行ってきている。ロックダウンに関しては昨年3月以降、一貫して批判し続けているし、ワクチン接種に関しても、昨年の段階では、米国ファイザー製薬の7千万回分のワクチンの提供を断ったり、保健省がブタンタン研究所と結ぼうとしていたコロナバックの購入契約を破棄させるなどの妨害行為を行っていた。
接種の義務化にも強固に反対し、「自分は受けない」と公言したりして、物議を醸してきた。
ボルソナロ氏は会合の最後に演説を行い、ロックダウンには依然として批判的な物言いをしたが、ワクチンに関しては「わが国にはオズワルド・クルス財団(Fiocruz)とブタンタン研究所という二つの主要なワクチン製造機関がある」とし、「できるだけ早く予防接種計画を進める」ことを公約した。
参加した企業家の話によると、ボルソナロ氏が予防接種の迅速化を約束した際は、企業家たちから喝采が贈られたという。
だが、コロナワクチンの接種は、コロナ禍を終わらせるには程遠いのが現状だ。ワクチンの供給が安定しておらず、7日の段階でも国民の10%が1回目の接種を終わらせているに過ぎず、2回目の接種が終わった人は3%にも満たない。連邦政府のワクチン接種計画は「計画性に欠ける」「ワクチンの供給量が少ない」などと批判の対象となっている。
また、7日にはブタンタン研究所が、中国からの有効成分の到着遅れでコロナバックの製造をいったん中止せざるをえなくなった。
ブラジルの場合、もうひとつのオックスフォード・ワクチンの生産状況が良くないため、コロナバックへの負担が大きく、さらに国家衛生監督庁(ANVISA)が緊急使用を許可したファイザーやスイスのヤンセン社のワクチン購入のめども立っていない。7日には連邦政府がファイザー社のワクチン購入契約の中の項目の一つを否定したため、同社側が契約破棄を申し出る可能性も生じている。
ファリア通信相は会合後、「夕食会は和やかな雰囲気で進み、3月の公開文書の内容に関連した連邦政府の対応の遅れを批判する発言はなかった」と語っている。