上院でのコロナ禍議会調査委員会(CPI)の報告官に、元上院議長のレナン・カリェイロス上議(民主運動・MDB)が選出された。かねてから反ボルソナロ派で知られるレナン氏が報告官をつとめることで、大統領がより苦しい立場に追い込まれることになりそうだと、17日付現地紙が報じている。
16日に各政党が指名したCPI委員たちが決めた人事は、報告官がレナン氏で、委員長がオマール・アジス上議(社会民主党・PSD)、副委員長がランドルフ・ロドリゲス上議(レデ)となった。アジス氏はこのCPIに関しては連邦政府、野党どちらにもくみしていないが、ランドルフ氏はこのCPIの発案者で、上院の野党リーダーでもある。
このCPIの捜査が連邦政府に不利に進むと、エドゥアルド・パズエロ前保健相の逮捕だけでなく、政権担当者としての責任を追及される形で大統領の罷免問題に発展する可能性があるため、連邦政府としては何としても食い止めたいものだった。
だがCPIの開設は避けようがなく、政府が当初望んだ「州や市にもコロナ禍の責任を負わせるもの」にもならなかった。さらに、ボルソナロ大統領に批判的な上議が与党議員より多く参加することになってしまった。
とりわけ避けたかったのは、当初から噂のあった、レナン氏が報告官をつとめるという筋書きだった。それは、レナン氏はルーラ、ジウマ両大統領の労働者党(PT)政権時代に上院議長を務めており、かねてからPTと敵対するボルソナロ氏に厳しい内容の報告を行うことが予想されていたからだ。
とりわけ15日には最高裁審理で、ルーラ氏が選挙出馬を禁じられる原因となっていたラヴァ・ジャット作戦での二つの裁判の判決が正式に無効化され、22年の大統領選でルーラ氏とボルソナロ氏が対決する可能性が高まったばかりだ。報道によっては早くも、このCPIは「大統領選の代理戦争」との見方を行っているものもある。
連邦政府はレナン氏所属のMDBにかけあい、同氏の報告官役を取り下げ、その座を上院の連邦政府副リーダーのマルコス・ロジェリオ上議(民主党・DEM)に譲るようもちかけた。だがMDB側が、レナン氏を外した場合、連邦政府との談合で決まったアジス氏の委員長を反故にし、連邦政府にとってはより不利となる委員長を選ぶことを示唆。これにより、連邦政府側が呑み込まざるを得なくなった。
この他にも連邦政府はPSDにかけあい、同党から委員に選ばれたオットー・アレンカール氏を、もう少し連邦政府寄りの上議に代えられないかを迫っていた。アレンカール氏は医師という立場から、ボルソナロ政権のコロナ対策の甘さを常に批判していた人物だからだ。だが、こちらも叶わなかった。
ロドリゴ・パシェコ上院議長は、CPIの発足をチラデンテスの休暇明けの22日、もしくは週明けの27日に行う意向であることを16日に発表した。審議は対面形式で行うものとした。
他方、19日付現地紙によると、このCPIではパズエロ氏以外の軍人閣僚らも調査対象とする意向。連邦会計検査院(TCU)の捜査対象になっている、パズエロ氏とヴァルテル・ブラガ・ネット国防相の二人が最初に呼ばれる見込みだという。このことは、CPIの調査がマナウス市での医療崩壊以外のことにも及ぶことを明示しており、連邦政府にとってはますます頭の痛い展開となりそうだ。