26日に国家衛生監督庁(ANVISA)がロシア製のコロナワクチン「スプートニクV」の輸入と緊急使用の承認を拒否したことに、北東部の知事たちが反発。最高裁を巻き込んで強行使用を行うことも辞さない状態であると、28日付現地紙が報じている。
ANVISAがスプートニクVの輸入・緊急使用許可を、委員投票0―5で却下したことに関し、強い反発が起こっている。
スプートニクVは全世界62カ国ですでに使用が許可されている。使用国はアフリカや中東が中心だが、中南米でもメキシコ、アルゼンチン、ベネズエラ、ボリビアなどで使用許可が出ている。同ワクチンは、治験結果でも91・6%の高い効用が報告されている。
そうしたこともあり、ブラジルでもセアラー、アクレー、アラゴアス、アマパー、バイア、マラニョン、マット・グロッソ、パラー、ペルナンブッコ、ピアウイ、リオ・グランデ・ド・ノルテ、ロンドニア、セルジッペ、トカンチンスの各州が共同購入計画をたて、輸入と緊急使用許可を求めていた。
こうした状況ではあったが、ANVISAは26日、「使用しているベクターの反応を見る限り、安全性を保証できない」「資料が足りない」として却下した。だが、この判断に対して、ロシアのスプートニクV開発チームは、「政治的な判断が働いている」と公式ツイッターで反論。ピアウイ州のウェリングトン・ジアス知事も、「誰かが嘘をついている」とANVISAを批判した。
このような反論や批判の根底には、現在のANVISAの理事の多くが、元来、ワクチンに反対しているボルソナロ大統領の指名で選ばれた人たちであること、スプートニクVを求めているのがボルソナロ政権と敵対する北東部の州が中心であるという構図がある。
今回のANVISAの判断に対しては最高裁も反応を示している。26日、リカルド・レヴァンドウスキー判事はANVISAが行った、スプートニクVの輸入に関する判断を行う期間の取り下げ請求を却下。ANVISAが判断を行わない場合は、輸入を希望している州に同ワクチンの輸入許可を認める判断を行った。同判事は昨年12月も、他国が合法としているコロナワクチンを州や市が輸入することを承認する判断を下している。
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ルイス・エドゥアルド・ラモス大統領府秘書室長官が「隠れてコロナワクチンを接種した」と語った録音が27日にネット上に流出し、話題を呼んでいる。これは保健省関連の補足健康審議会での発言だ。ラモス氏は外出規制をかいくぐってコロナワクチンの接種を受けたと述べ、今後はボルソナロ大統領にもワクチン接種を受けるよう説得する意向だと語っている。ラモス氏は連邦政府内のリーダー役のひとりだが、そうした人物がコロナワクチンを内緒で打たなければならないほど、ワクチンの話がしにくい空気が連邦政府内にはあるということなのか。現在は上院でのコロナ禍CPIがはじまったばかりだが、この件も政府の責任追及の材料として使われそうだ。