ホーム | 日系社会ニュース | 【特別企画】多彩な活躍する水谷ペドロ氏=コロナ禍でも好調な砂糖産業=世界と繋がるカラオケ大会《1》

【特別企画】多彩な活躍する水谷ペドロ氏=コロナ禍でも好調な砂糖産業=世界と繋がるカラオケ大会《1》

水谷ペドロ・イサム氏。コザン社(Cosan)およびサトウキビ産業連合(Unica)取締役、サトウキビ技術センターCTC社取締役会会長、パウリスタ・カラオケ連盟会長など

水谷ペドロ・イサム氏。コザン社(Cosan)およびサトウキビ産業連合(Unica)取締役、サトウキビ技術センターCTC社取締役会会長、パウリスタ・カラオケ連盟会長など

 昨年3月のパンデミック以来、日常の様々な局面が新たな生活様式に迫られた。そんな局面にもひるむことなく、ビジネスを好調に進めるのがサトウキビ産業だ。水谷ペドロ・イサム氏(61歳、サンパウロ州リベイロン・プレット生まれ)は、2000年以降、ブラジルの重要なアグロビジネスであるサトウキビ部門のトップを務める人物である。同氏は現在、バイオエタノールメーカー・コザン社(Cosan)とサトウキビ産業連合(Unica)取締役、サトウキビ技術センター(CTC)取締役会会長に加え、日系社会でもパウリスタ・カラオケ連盟会長やピラシカーバ日本ブラジル文化クラブ会長など多様な役職を務める。今回は特別企画として、水谷氏にサトウキビ産業の現状や日系社会の主要イベントであるカラオケ大会の展望、自身の生い立ちになどについて聞いてみた。(文・大浦智子)

 ブラジルの農業ビジネスはGDPの約25%を占める。サトウキビは、ブラジルと世界の食糧とエネルギーを供給する重要なセクターであり、コロナ禍で消費が減少した他のエネルギー部門よりも順調な状況にある。
 水谷氏によると、パンデミック以来、自動車での移動が減ったことで、ガソリンやアルコール燃料の需要が50%近く減少した。世界中のエネルギー産業が売れ行きの悪化に直面し、バイオエタノールを販売するコザンも、需要が大幅に低下することを危惧した。
 エタノールの値段は、燃料の需要と国際市場での石油価格に左右される。ガソリンの値段は、石油の値段で決定される。ガソリンスタンドでのガソリンとエタノールの価格は深い関わりがある。その比重はガソリンの70~75パーセントであるため、エタノールはガソリンの75%までの値段に設定されなければ売れない。
 昨年、OPEC(石油輸出国機構)は、パンデミックに入ってから時間が経過しても、燃料の需要はそこまで減らないことに気付き始め、石油の供給を減らすことに同意した。そのため、国際市場で石油の値段が上昇した。さらに、レアルの価値が米ドルに対して下がった。それらの要因でコザンもエタノールの値段を高く保ち続けることが可能となった。
 加えて、国際市場での砂糖の売れ行きが回復した。砂糖もエタノールもサトウキビのしぼり汁から生産されるが、エタノールの生産は下がっても値段は上がり、食料の砂糖生産は増加したことで、パンデミックでも危機を乗り切り続けている。
 スクロエネルジェチコ(砂糖エネルギー)部門にとって、パンデミックは思いのほか良い方向に導かれることになった。燃料の需要が下がっていなければもっと良かったが、他の産業に比べれば、砂糖とエタノール産業はとても好調な今である。(つづく)