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《ブラジル》法定アマゾンの伐採面積は新記録=気候サミットでの約束は?=地球の空調機能に赤信号

法定アマゾンでの4月の森林伐採の推移(7日付G1サイトの記事の一部)

 国立宇宙研修所(INPE)が7日、4月の法定アマゾンの森林伐採面積は29日までで581平方キロに上り、4月としての月間記録を大幅に更新したと7日付伯字サイトが報じた。前日には法定アマゾンは酸素放出量以上に二酸化炭素を放出しているとの研究結果も発表されており、法定アマゾンが「地球の空調機能」を失った可能性も出てきている。
 4月の伐採面積は、16年4月の440平方キロや18年4月の490平方キロを大幅に上回っている。法定アマゾンでは3月も、同月としては測定開始以来最大となる367平方キロの伐採が行われており、2カ月連続で月間記録を更新した事になる。
 これらのデータは、Deterと呼ばれるシステムによるもので、連邦政府の公式データとなる、8月から翌年7月までの伐採面積測定用のProdesと呼ばれるシステムより解析能力が低いが、伐採や金属の採掘、焼失などを含む3ヘクタール以上の土地の浸食をリアルタイムで捉えるため、環境監視機関による伐採監視には不可欠だ。
 連邦政府はInpeに先立ち、軍による監視活動により、昨年8月から今年4月の伐採面積は前年同期比で約15%減少したと発表していた。だが、3月と4月の伐採面積が2カ月連続で月間記録を更新した事で、56の環境保護市民団体からなる気候観察(Observatório do Clima)は、政府が利用したデータの信ぴょう性が疑わしくなったとしている。
 ボルソナロ大統領は4月に開催された気候変動サミットで30年までに不法伐採をゼロにする事などを公約したが、現状のままでは公約実現は難しそうだ。

 また、法定アマゾンでの森林伐採や森林火災の増加は国際的にも関心を集め、貿易協定の締結などにも影響を及ぼしている。だが6日には、法定アマゾンが既に国際社会の期待にそえなくなっている可能性を示す研究成果も発表された。
 法定アマゾンの二酸化炭素吸収量が落ちている事は10年発表の研究でも指摘されていたが、14年頃からは、二酸化炭素の放出量が吸収量を上回っているというのだ。
 6日付G1サイトが掲載した気候変動の専門家の言葉によると、「森林の30%が伐採されたアマゾン東部は、11%が伐採された西部の10倍の二酸化炭素を放出しており、アマゾンは既に二酸化炭素の排出源だ。これが逆転できるかは私にはわからない」という。
 アマゾン環境調査研究所(Ipam)のパウロ・モウチーニョ氏は、「ブラジル内外のアマゾンの森は長年、温室効果ガスを吸収してきたが、生物の多様性や文化の喪失により、森林が二酸化炭素を吸収する事と関係が深い地球の空調機能が失われてきている」と指摘。
 Inpeのルシアナ・ガッチ氏は「人類がもたらした破壊や損失は自然が吸収しきれないほどになっている」とし、乾期に入る8月以降の焼き畑を完全に禁止する事などを提唱している。
 気候変動サミットの公約実現や伯国民並びに人類を守る意味でも、森林伐採や森林火災の撲滅は急務だ。