【既報関連】エスタード紙が9、10日付で報じた、ボルソナロ政権による連邦議会の支持取り付けが目的と思われる、主要議員向けの秘密の資金払い出しが30億レアル分も行われていたという不正支出疑惑は、「ボルソロン」または「トラトラッソ」(トラクターを大量購入した疑惑)の名で早くも話題となっているが、11日付同紙はこの件に関し、今度はアルトゥール・リラ下院議長(進歩党・PP)絡みの疑惑を報じている。
10日までの報道では、リラ下院議長は、ダヴィ・アルコルンブレ前上院議長(民主党・DEM)、PP党首のシロ・ノゲイラ上議、上院連邦政府リーダーのフェルナンド・ベゼーラ上議(MDB)につぐ多額の払い出しを、正規の議員割当金以外に受けていたことが報じられている。リラ氏が地域開発省から受けたとされる1億1460万レアルは、16年分の議員割当金に相当する額だ。
11日の報道では、リラ氏絡みの金の動きの詳細があきらかにされている。同紙によると、昨年の市長選の3週間前、アラゴアス州ジュンケイロの市長で、再選を目指していたカルロス・アウグスト氏(通称カルリーニョス、民主運動・MDB)のもとに、トラクターとショベルカー各1台が送られたという。
この2台の重機は、一連の報道で渦中の存在となっている、サンフランシスコ川とパルナイーバ川流域の開発公社(Codevasf)が納品した。Codevasfは、アルコルンブレ前上院議長が8100万レアル、フラヴィア・アルーダ下議(当時、現大統領府秘書室長官)が500万レアルのプロジェクトを提出し、地域開発省からの払い出しを受けた機関だ。
ジュンケイロ市はリラ氏の父で元上議のベネジート・デ・リラ氏の故郷で、リラ家にゆかりのある人物が28年間、市長を務めていた。この選挙でも、リラ氏のいとこのジョアンジーニョ・ペレイラ氏がカルリーニョス氏の支援演説などを行っているが、このジョアンジーニョはCodevasfの役員のひとりだ。リラ氏自身もこの選挙では、カルリーニョス氏に票を投じるよう呼び掛けていた。
ところが、この選挙でカルリーニョス氏が対立候補のレアンドロ・シウヴァ氏(ブラジル労働党・PTB)に敗れたことで、事態が複雑化した。市長就任前にトラクターの件を知ったレアンドロ氏がこの件を問題視し、カルリーニョス氏にトラクターとショベルカーをCodevasfに返すよう働きかけた。レアンドロ氏は今年の1月8日に市の人事局に対し、「前任者が市に必要のない資産の返却を行った」との確認の報告まで行っている。
今回の報道では、リラ氏の要請でCodevasfに支払われた資金は7千万レアルで、そのほかにも、3千万レアルが国家干害対策工事局(Dnocs)に支払われていたことがあきらかにされた。Dnocsでは単価10万レアル以上のトラクターが44台購買される予定だった。
Codevasfはセントロンが仕切っている公社としても知られており、現政権になってから資金配分が急増している公的機関の一つだ。同紙によると、大統領からの並行予算の支払いを受けた議員たちは、トラクターの大量購入のほかに、票田となる地域の高速道などの舗装工事に16億レアルが求めていたことがわかっているという。
ボルソナロ大統領は今回のボルソロン報道を「でたらめだ」と批判している。だが、連邦会計検査院(TCU)は、今回の30億レアルに加え、合計で53億3千万レアルの公金が議会での大統領の地盤固めに使われたとの疑いを持っているという。
★2021年5月11日《ブラジル》エスタード紙報道 30億レの巨額不正疑惑浮上!=政府の議会工作秘密資金か=早くも「ボルソロン」命名=大スキャンダルに発展?
★2020年10月6日《ブラジル》下院議長が「歳出上限の厳守」念押し=地域開発相の軽率発言に=苦しむ「レンダ・シダダン」の財源探し
★2020年8月18日《記者コラム》樹海=セントロン復活と追い詰められたゲデス経済相