13日、上院のコロナ禍の議会調査委員会(CPI)でファイザー製薬南米支社長のカルロス・ムリーロ氏が召喚され、証言を行った。同氏は、ワクチン提供に関する連邦政府との契約交渉は昨年8月から始まり、政府が応じようとしなかったために昨年末には可能だったワクチン接種の機会を逃したこと、交渉の席にボルソナロ大統領次男のカルロス・リオ市議がいた事実を明かし、波紋を投げ掛けた。13、14日付現地紙、サイトが報じている。
ムリーロ氏の召喚も、今回のCPIの中では注目度の高いものだった。それは、ボルソナロ大統領が昨年8月のファイザー社からのワクチン提供の申し出を断ったがために、7千万回分のワクチン契約が反故にされたとの報道がかねてから行われていたためだ。
ムリーロ氏は今回の答弁でこの事実を認めた。同氏によると、2020年8月だけでも14日、18日、26日の3度にわたり、連邦政府にワクチンの条件提示を行ったという。交渉そのものは同年5月から行おうとしたが、連邦政府が3カ月間、交渉の席につこうとしなかった。それでも世界では6番目に早いものだったという。特に26日のものに関しては15日間返答を待ったが、連邦政府からの返事がなかった。
同氏によると、昨年は計5回、ワクチン提供を申し入れており、最初は3千万回、続いて7千万回分のワクチン提供が可能と提案したという。7千万回分の契約の場合は、2020年の内に150万回、21年第1四半期に300万回、第2四半期に1400万回、下半期に5150万回を納品する計画だった。つまり、この時点で交渉に応じていれば、21年上半期までに1850万回分のワクチンを受け取れていたことになる。
同社は今年に入ってからも2月15日に1億回分の提供を申し入れたが、このときも不調。3月8日の交渉でようやくまとまった。このときの契約では21年上半期までに1400万回、下半期で8600万回分の提供を受けることになったが、それでも当初のプランよりは4カ月遅れ、上半期の納入数は450万回少ないことになる。その4カ月の間にはコロナ第2波で状況が悪化し、3月~4月の死者急増を招いた。
ムリーロ氏はさらに、同社との交渉の席に、大統領次男のカルロス氏、さらにボルソナロ大統領の側近で、大統領府国際問題担当特別補佐官のフィリペ・マルチンス氏の2人が同席していたと発言した。同氏によると、会議の時は社会通信局(SECOM)のファビオ・ワインガルテン局長(当時)が出迎えてくれ、ワインガルテン氏が電話を受けて外に出た後、カルロス氏、マルチンス氏の2人が入室して交渉の場に着いたという。
4日のCPIでは元保健相のルイス・エンリケ・マンデッタ氏が「影のコロナ対策委員会」の存在を指摘し、そこにカルロス氏が出席していたと証言しており、それが裏付けられた形になった。また、マルチンス氏は今年3月、上院内で白人優越主義者を示すポーズをとったことで問題となった人物だ。
カルロス氏、マルチンス氏共に医療とは関係ない人物で、リオ市の市会議員のカルロス氏には連邦政府内の業務に関与する権限はない。
また、ムリーロ氏とワインガルテン氏の証言にはいくつかの食い違いが見られ、ワインガルテン氏の証言の信ぴょう性や証言責任の問題が再燃する可能性もある。
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