英国のスーパー経営者などが、ブラジル連邦議会が審議中で連邦政府も支援している法案PL510/2021が承認された場合、ブラジル産品の購入や販売を停止する意向を表明、連邦議員達に公開書簡を送付と5日付エポカ誌サイトなどが報じた。
問題のPL510/2021は、2009年6月に提出されたPL11952/2009の修正版で、土地所有権の正規化と土地所得へのインセンティブに関する内容の故に「土地取得法案(PL da Grilagem)」と呼ばれている。
表向きの名称からはわかりにくいが、その内容は、国有地に侵入し、その森林を不法伐採した人物に土地の所有を認めるという、不法伐採や不法開発を公的に促すような法案だ。この法案が承認された場合、不法伐採によって開発された農地やリゾート用地は合法化され、不法伐採者は国有地内に自分の土地を所有する事が可能となる。
同様の犯罪行為は法定アマゾンやパンタナルなどで繰り返され、検察や警察が捜査を継続しているが、現状ですら、不法伐採者が断罪されて懲罰を受けるまでには時間がかかる。その上にこの法案が承認、裁可されれば、個人の所有地での許容範囲を超える森林伐採に加えて、国有地での不法伐採も加速化し得ると見られている。
ボルソナロ大統領は4月に行われた気候変動サミットで不法伐採の撲滅などを約束したが、同時点でも既に、約束履行の手段などが明示されておらず本当に実行するかを疑われていた。
また、同サミットでの公約直後には法定アマゾンでの3月、4月の森林伐採面積は過去最高だったと報じられている。
ボルソナロ氏が大統領選当選直後から、食糧確保のための法定アマゾンの開発や先住民居住地での鉱物採掘を容認する発言を行っている事は世界中が知るところだ。さらに、森林伐採や森林火災の増加や先住民の人権蹂躙は、国際社会からの支援打ち切りを招いた上、欧州と南米南部共同市場(メルコスル)の自由貿易協定締結も暗礁に乗り上げている。
環境意識の強い国々が法定アマゾンの重要性を訴え、不法伐採によって開発された地域の産品不買を呼び掛ける声は以前からある。だが今回は、具体的な法案の内容を指摘し、連邦議会に再考を促すための公開書簡を送付するという行為も伴う抗議活動となった。公開書簡に署名しているのは、英国の大手スーパーや小売店協会など約40の企業や団体だ。
ミナス連邦大学(UFMG)の調査員達は、PL510は2014年までに行われた不法伐採地6600万ヘクタールを合法化し、不正伐採者に免罪符を渡す上、国有地内の森林2400万ヘクタールを含む4300万ヘクタールが不法伐採や不法開発の対象となり、森林保護体制がより脆弱になると懸念している。
ブラジル全国司教会議(CNBB)も4日に、同法案の審議を停止するよう要請する公開書簡をロドリゴ・パシェコ上院議長に提出している。
★2019年1月11日「アマゾンは世界のものではない」=環境保護より農地開発を重視?=軋轢起こすボルソナロの方針
★2012年5月8日アマゾン開発の遠因はセラード=牧畜などの場所が移動=大西洋岸森林地帯ほぼ壊滅=自然災害増加も招く温暖化
★2020年9月17日《ブラジル》法定アマゾンの伐採削減を=230団体が異例の共同提案
★2011年6月8日《ブラジル》パラー南東部は世界一危険=殺人率ホンジュラス超す=91人/10万人が被害に=7日から軍や連警ら派遣