新型コロナのワクチン接種が国際的な話題となる中、ブラジルではワクチン不足などを懸念し、ワクチン接種のために米国に行く人が出始めた。ラ米ではパックツアーを提供する業者もあると4日付エスタード紙、12日付アジェンシア・ブラジルなどが報じた。
ブラジルを含むラ米諸国は感染拡大に歯止めがかからない上、ワクチン接種は望むほどのペースで進まず、一刻も早いワクチン接種と国際社会でも通用する認証獲得を考える人達によるワクチンツアーが増えている。
欧州ではロシアへのワクチンツアーもあるが、ラ米諸国からのツアーの中心は米国向けだ。米国はバイデン大統領が積極的にワクチン確保と接種に取り組んだためにワクチンがだぶついて、接種基準が緩和された上、新型コロナの影響が深刻な国へのワクチン提供さえ行われている。
フロリダ州では1月以降、同州在住か同州で働いている人は誰でも接種可能となったし、4月30日からは16歳以上の人の住所証明提示も免除している。
ミナス州在住のセルジオ・リカルド氏(27)とタイス・フェルナンデス氏(31)は、2月にワクチンツアーの事を知り、デンマーク行きの予定を米国行きに変更。防疫のための隔離期間(クアレンテーナ)順守後、マイアミの学校の特設会場でジョンソン&ジョンソン社(J&J)のワクチン接種を受けた。接種はパスポートを提示するだけでよく、オーランドで4日間を過ごした後、帰国した。
リオ市在住のルビア氏(54)は、オーランドにいる息子が新型コロナに感染し、世話が必要になったため、3月に休暇をとって米国に行き、ファイザー社のワクチン接種を受けた。息子はブラジル人だが米国の市民権も持っており、彼と同居しているというと、10分間待っただけで接種を受けられたという。
現地ではワクチン接種を受けるブラジル人が増えているが、ブラジルではまだ個人レベルのワクチンツアー中心で、パックツアーは一般化していない。フロリダ州政府によると、他州または他国から来てワクチン接種を受けた人は1月だけで5万2千人。ニューヨーク市では、同市に送られたワクチンの25%が非住民に使用されている。
ラ米諸国ではパックツアーもあり、航空会社も需要の高まりを実感。4月末にラスベガスでJ&Jのワクチン接種を受けたメキシコのグロリア・サンシェス氏(66)と夫のアンジェル・メネンデス氏(69)は、その一例だ。グロリア氏はツアーを行った理由について、「メキシコの公衆衛生政策は信頼できない。ここに居たら、まだ接種を受けられていなかったはず」と説明している。
同国でのワクチンツアーの需要は急増中で、メキシコシティにはラスベガスの業者と提携し、ワクチン接種を含む1週間のツアーを提供する会社がある。同国からのツアーは、ラスベガス、ダラス、ヒューストン、マイアミ向けがあり、3月中旬からはパックツアー価格が30~40%値上がりしているという。
ペルーの米国大使館はツイッターで、ワクチン接種を含む医療目的の旅行を認めると報じた。
アルゼンチンでは、マイアミへのワクチンツアーは航空券2千ドル、1週間のホテル代550ドル、食費350ドル、ワクチン接種証明込みのレンタカー経費500ドルと、経費詳細を掲載した案内が出ている。
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