18日、上院でコロナ禍議会調査員会(CPI)が開かれ、エルネスト・アラウージョ前外相が証言を行った。外相の立場でありながら中国の陰謀論を拡散していた同氏は、「中国を非難したことなどない」と発言し、オマール・アジス委員長から「嘘つき」と呼ばれる一幕もあった。18日付現地サイトが報じている。
同CPIでは先週まで、前保健相や保健関係者を召喚しており、連邦政府に不利な証言が続いていたが、今週はボルソナロ大統領に近い、現・元連邦政府関係者の召喚となる。
今週の召喚者第1号のアラウージョ氏は、かねてから、地球温暖化や科学を否定する典型的な極右的言動で知られ、コロナウイルスに関しても、「中国陰謀論」を語っていた。同氏や連邦政府関係者が行った、中国を刺激する発言は、コロナバックやオックスフォード・ワクチンといったコロナワクチンの主原料となる中国からの有効成分(IFA)の輸出の遅れなどにつながっているのではと言われていた。
アラウージョ氏はこの日の答弁の冒頭で、「中国政府を刺激するような言動をした覚えはない」としらを切った。
だが、これに対してアジス委員長は、「『コミュナウイルス(共産圏のウイルス)』という表現は問題発言ではないのか」とたずねた。これは昨年の4月、アラウージョ氏が自身のブログでコロナウイルスを揶揄したときの発言だ。このときは「中国が世界保健機関(WHO)も支配している」とも主張していた。
アジス委員長はアラウージョ氏に対し、「あなたは中国に関する発言を数多く行っている。本当のことを話すように」と警告した。
他方、これまでの報道でアラウージョ氏が強くバックアップしたとされるクロロキンに関しては、「当初は効用を強く期待した」として否定せず、インドに原材料の輸出を求めたこと、米国まで購入に出向いたこと、さらにボルソナロ氏自身がクロロキンの会議に自ら参加したことを認めた。
また、ボルソナロ大統領の命令でイスラエルに行き、コロナ治療薬候補として同国で話題になっていたスプレー式点鼻薬の視察に行ったことも認めている。
アラウージョ氏はさらに、「ワクチンの購買にも反対したことなどはない。保健省の判断に従った」と語った。だが、このときもアジス委員長から、同氏が昨年12月に「クロロキンに反対する連中がワクチンが必要だと主張しているのだ」と発言したことを指摘され、「それがブラジルのワクチン接種を遅らせたのでは」と皮肉られた。
オットー・アレンカール委員には、「コバックス・ファシリティとの最初の2回の会議にあなたは参加していなかった」と批判され、傍聴していたカチア・アブレウ上議からも、「あなたは典型的な否定論者だ」「ブラジルのワクチンの85%を占めるコロナバックの購買には何の協力もしなかった」と責められた。
そんなアラウージョ氏も、7千万回分もの提供依頼を反故にした米国ファイザー製薬との契約に関しては、「依頼があったことは知っていたが、連邦政府で誰も解決しようとしなかった」ことを認めている。
19日は、今回のCPIで最も注目されている、エドゥアルド・パズエロ前保健相が召喚されている。だが同氏は既に、最高裁から、自分に対して不利になる質問には黙秘を行うことを認められている。だが、本人に関すること以外は黙秘が使えないため、委員たちはボルソナロ大統領も含めた、周囲の人物への質問などを準備して待ち構えているといわれる。