SNSの運営企業がフェイクニュースや不謹慎と思われる内容の投稿などを削除するのを制限する条例を、連邦政府が準備しようとしており、それがコロナウイルスなど公衆衛生上の危険をもたらす可能性のあるフェイクニュースの拡散などを招き得るとして物議を醸している。20日付現地紙、サイトが報じている。
同日付フォーリャ紙によると、これは、ツイッターやフェイスブック、インスタグラムといったSNS上で行った発言に関し、運営企業の運営規定による判断ではなく、裁判所が禁止したものだけを削除することを定めたものだ。
連邦政府が今回、この条例を出そうとしているのは、ボルソナロ大統領や大統領を支持する政治家、企業家、ファンなどがコロナウイルスに関して行った発言を、運営元が「不適切」として削除することが頻繁に起こっているためだ。
この条例では、法的許可がなくても削除できるものとして、「テロや犯罪を美化するもの」「青少年憲章に抵触するもの」「暴力を煽る威嚇的行為」などに限る、としている。
大統領は5日、「私や支持者たちの表現の自由が侵害されている」とし、「我々はネットの表現を定める規程を制定するべきだ」と発言。それが形となったのがこの条例だ。
この条例は、マリオ・フリアス文化局長に強い権限を与えるものになるとみられている。それは主要なSNSへの資金提供などの窓口が文化局であるためだ。
だが、この条例に対して早速「違憲だ」という反論が起こっている。リオ州立大学法学部教授でソフトウェア技術研究所(ITS)理事のカルロス・アフォンソ・ソウザ氏は、「運営企業にネット環境の管理を制限させることになる」として疑問を呈している。
ブラジリア大学センターの法学教授のパウロ・レナー氏も、「ヘイト・スピーチを取り締まるのを困難にしてしまう」として懸念を表明している。
米国では、1月6日に起こった連邦議事堂襲撃事件後、暴力を扇動したとしてツイッター、フェイスブック、インスタグラムがトランプ前大統領のアカウントに追放処分を下している。
ボルソナロ大統領の側近政治家や親しい企業家らは、昨年7月に連邦警察と最高裁が管轄するフェイクニュース捜査の対象となっており、運営元や司法当局などからの監視の目が厳しくなっている。
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★2019年6月18日《ブラジル》日本移民の日座談会=ざっくばらんに行こう!=どうなるボルソナロ政権の行方?=ネットで民意を操る大統領登場=SNS民主主義のいびつさを暴く=デジタルがどこまでリアルを動かすか?