27日、上院のコロナ禍に関する議会調査委員会(CPI)で、サンパウロ市ブタンタン研究所のジマス・コーヴァス所長が証言を行った。同研究所はコロナワクチンのコロナバックの治験と生産も管轄しており、コーヴァス氏は、コロナバックに関する打診は昨年6月にはじまり、10月には1億回分の供給の提案まで行ったが、ボルソナロ大統領の否定的態度で契約が遅れたとの証言を行った。27日付現地サイトが報じている。
コロナバックは、保健省が昨年10月19日に同研究所と連絡を取り、購入の意向を表明。購入計画があることはその翌日、知事たちと全国の接種計画を話し合った際に発表されたが、ボルソナロ大統領の介入により、21日に反故にされたという経緯がある。また、有効成分(IFA)の輸入の遅れも、現政権関係者の発言が影響しているとされてきた。
それだけに、27日のジマス所長による証言は、大統領や保健省のコロナ対策や予防接種計画そのものに直接かかわるものとして注目されていた。
ジマス所長によると、連邦政府との交渉は昨年6月の時点で始まっており、その際に「第4四半期には6千万回分のコロナバックを支給できる」との提案を行っていたという。「このときに応じていればブラジルは世界最初のワクチン接種国になっていた」とジマス氏は主張している。
そして、8月18日に再度提案を行ったのち、10月7日には1億回分のワクチン供給の提案を行ったという。そのときの計画では、4500万回分を2020年の内に、1500万回分を21年2月までに、残りの4千万回分を21年5月までに提供することになっていた。
保健省との交渉はそこからはじまり、10月20日にエドゥアルド・パズエロ保健相(当時)は知事たちの会合で、「4600万回分のコロナバックを購入する」と宣言した。
「パズエロ氏はそのときに『ブラジル待望待望のワクチン』とまで言ったが、その直後の大統領の否定的な発言で、ワクチン計画が進まなくなった」とジマス氏は語った。結局、連邦政府が1億回分のコロナバックの購入契約を結んだのは21年1月7日となった。
これに対し、連邦政府側の委員であるマルセロ・ロジェリオ上議(民主党・DEM)が、ジョアン・ドリア・サンパウロ州知事が会州知事が会議の席で「ボルソミニオン(ボルソナロ支持者の蔑称)は悪い連中」といった音声テープを流し、「大統領と州知事の関係が交渉を遅らせたのではないか」と問いかけたが、「それは会議の一部を切り取ったものにすぎない」とジマス氏は反論した。ドリア知事は大統領支持者からしばしば脅迫を受けていた。
ジマス氏はさらに、「コロナバックの開発費として国に8千万レアルを求めたが、無視された」とも語り、工場拡大を含む1億8千万レアルの開発費が民間投資で賄われていることも明かした。これに対して、連邦政府側のフェルナンド・ベゼーラ委員が「連邦政府はあなたがたに何10億レアルも払っている」と反論したが、ジマス氏は「19年と20年に支払われたのは、保健省に納品した他のワクチンの分」で「開発・生産支援は1レアルたりとも払われていない」と反論。「今年2月にコロナバックを納品した際にはじめて、金が支払われた」と語った。
ジマス氏はまた、コロナバックと同じ1月17日に緊急使用許可が出たオックスフォード・ワクチンを管轄するオズワルド・クルス財団(Fiocruz)とは「ずいぶん違う待遇を受けた」とも語っている。
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