新型コロナのパンデミックは多くの失業者を生んだが、その一方で、危機をチャンスに変えた人達もいると27日付G1サイトなどが報じた。
感染第2波で感染者や死者が増え、外出規制が強化された3月にリオ市北部で店を借りて諸準備を進め、4月に入って菓子店を開けたテイシェイラ夫妻はその一例だ。
ルイス氏はタクシー運転手、イザベラ氏は会社員だった。イザベラ氏が1月に11年間務めていた会社を解雇されたのを機に、2年前から続けていた自家製の菓子販売を本格化させたのだ。
イザベラ氏は元々、知り合いなどからの注文で菓子を作り、多少の収入を得ていたが、ルイス氏の収入が伸び悩んでいたため、ブラウニーを作ってルイス氏に託し、乗客に売ってもらい始めた。その売上は上々だった。
だが、ルイス氏の母親は手製のケーキを作り、家々を訪ねて売っていた。その後ろ姿を見て、この商売は労多くして益少なしという風に否定的に見ていた。
だが、2019年にハンバーガーショップと提携し、レモンパイを納品するようになった事で状況が変化。10店舗からの注文を受けるようになり、同年7月に個人零細企業(MEI)としての登録も行った。
その後、別のハンバーガーショップからも注文が入るようになり、ブラウニーを卸すようになったが、日中は別の仕事をし、未明までかかって菓子類を作るという状態が続いていた。
そこに降ってわいたのがコロナ禍で、タクシーの収入が激減したのを見た二人は昨年9月、マーケティング専門の会社と契約し、「ベラ・ドセリア」をアピールすると、オンラインのデリバリーを開始。販売は順調で、1日20~30件の注文が入るようになり、自分達だけで続けるのは困難になった。
そこで加わったのがイザベル氏の姉妹のロベルタ・カンポス氏だ。彼女は二人を助けるために退職したが、それでも注文をさばききれず、いとこも呼ぶ事にした。
デリバリー販売の急増で人員増の必要に駆られていた時に起きたのがイサベラ氏の解雇だったが、夫妻はこれをビジネス拡大のチャンスとした。解雇で入った退職金を、ハンバーガーショップを閉めて改築していた店を借り、ビジネスを拡大する資金としたのだ。
イサベラ氏は店を開けるに際し、競合店の情報なども分析。サイトの書き込みなども参照にして客層やメニューを絞り込む内に、ベジタリアン向けも含む30以上のメニューが決まり、開店。
注文は引きも切らず、家で作っていた時の最大30件が1日120件を超えるようになった。
開店から1カ月で、テイシェイラ夫妻はMEIではやっていけない事に気づき、店の経営形態を変える事を決意。レジ係を雇い、ケーキ作りにも新たな人員を補強した。
顧客の中にはリオ市中央部からタクシーで買いに来る人や、ケーキが気に入ったからと、夫妻に会いに来る人さえいるという。イサベラ氏は「新たな店を開ける事はこれまでに行った決断の中で最上の決断だった」と言ってはばからない。