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《ブラジル》TCU疑惑=大統領の意向に沿った報告書?=監査官が個人的文書と自白=コロナ死者50%過剰と指摘=大統領と親交深い一家

停職となったマルケス氏(Twitter)

 【既報関連】7日にボルソナロ大統領が言及したことで注目された、連邦会計検査院(TCU)によるコロナ感染症による死者数に疑問を呈する報告書が、TCUの会計監査官が個人的に作成し、その父親の軍人が大統領に渡したものであることが判明した。8、9日付現地紙、サイトが報じている。
 この件は7日午前、ボルソナロ氏が大統領官邸前での支持者との会話で、「TCUが数日前、コロナ死者数に関して50%も上乗せした過剰報告が行われているとする報告書を作成した」「一部のメディアにも話したが、今日の午後公表する」と発言したことで問題化していた。
 大統領はこの報告書をもって、知事たちが自分を陥れ、より多くの支援を得ようとしていると主張し、死者数の過剰報告がなされているとの考えを繰り返し述べていた。この考えは、報告されていない感染者や死者が相当数いるという専門家の主張と真反対のものだ
 TCUは同日中に「そのような報告書はない」と否定。翌8日午前中にはボルソナロ大統領も「自分の間違いだった」と否定した。
 だが、この一件はこれでは終わらなかった。上院のコロナ禍議会調査委員会(CPI)のランドルフ・ロドリゲス副委員長は8日、この報告書を書いたと思われる人物を召喚するか否かを決める委員会投票を9日に行う意向があることを発表した。
 一方、TCUも「過剰報告を指摘した報告書を作成した人物を明らかにしたい」との意向を8日の内に示していた。
 翌9日、TCUは会計監査官のアレッシャンドレ・フィゲイレード・コスタ・エ・シウヴァ・マルケス氏を60日間の停職処分にすると発表した。

 TCUによると、マルケス氏は直属の上司に、大統領が言及した報告書は自分が個人的に作成したもので、「各州が送ってくる死者数の報告内容は疑わしい」というコメントに関心を持った父親が、それをボルソナロ氏に渡したと告白したという。
 マルケス氏の一家はボルソナロ家と親しく、マルケス氏自身も、大統領の息子たちの推薦を受け、2019年に大統領によって社会経済開発銀行(BNDES)の役員に指名されたことがある。だが、TCUはBNDESを監査する立場にあることから、この指名に反対して却下された。
 また、資料を大統領に渡したとされるマルケス氏の父のリカルド・シウヴァ・マルケス氏は陸軍軍曹で、2019年にボルソナロ氏の指名を受け、ペトロブラス内の役職に就いていたこと、ボルソナロ氏自身にも少なくとも3度会っていたことなどが明らかになっている。
 こうした事態を受け、TCUのブルーノ・ダンタス監査局長は、TCU長官に調査報告書を送付すると共に、マルケス氏停職を希望していた。TCUはマルケス氏に関する内部調査を命じると共に、連邦警察に今回の報告書問題に関する捜査を行うよう求めている。各州に送られるコロナ対策の支援金は、各州保健局が送ってくる死者などの報告に応じて支給され、マルケス氏はその監査を担当していた。
 今回の報告書がマルケス氏の手になるものであるとの疑惑が発覚したことで、TCUは既に、同氏を担当部署から外している。
 また、CPIのオマール・アジス委員長も9日、アレッシャンドレ・マルケス氏に関して、個人情報を開示するか否かの投票を行う意向を明らかにしている。
 ボルソナロ氏は7日、この報告書問題に加え、ファイザー製薬本社からのワクチン提供に関する関心の有無を問う手紙を無視したこと、18年の大統領選挙時の違法献金疑惑が浮上したことが明らかになって立場を悪くしたが、8日にはそれに加え、昨年10月に開かれた講演会で「ワクチンは値段が高い」と批判して、集団免疫獲得の必要性を説いていた証拠となるビデオが流出して物議を醸していた。